プロローグ 流星雨

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円形の舞台の半分を囲んでいる7本の柱に、順番に火が灯った。
日が暮れて暗くなっていく空を背景に青く浮かび上がる魔法の光。
やがて、舞台の中心にある魔方陣がかすかに光り始めた。
客席からは低い嘆声の渦が巻き起こり、やがて静まった。
薄暗い照明に合わせたように、舞台の中央に立っている俳優は低い声で呟いていた。
そして徐々にその独白の声は大きくなり、強烈な叫びへと変わった。
それと同時に俳優の足元で舞台を飾っていた魔方陣がまるで光を噴き出すように光った。

両親の間に挟まれおとなしく座っていた幼い少女は周りを見回した。
少女には舞台の上での劇の内容よりは、客席の全エルフが感嘆の息を吐き、涙を拭く姿の方がもっと興味深かった。
寿命が長く、精神の成長が早いのがエルフという種族の特長だが、芝居の中で複雑に絡む人物関係や権力の流れなどを理解するには少女はまだ幼かった。
舞台の上で長い独白を行っている俳優が、エルフの文化・芸術の先頭に立つ人物であり、大陸に住む誰もが彼を知っているほどの有名な俳優兼劇作家であること、そしてエルフの歴史に刻まれる程の人物であることなど、この少女には何の意味もないことだった。

少し涙ぐんだ目を拭き、両親を見つめていた少女は何気なく空を仰いだ。
いつの間にか空を覆っていた夕焼けは、厚い闇の裾の下にその色を隠し、西の空の端にかすかな光が残っているだけだった。
その時、尻尾のように長い光が一筋空を横切った。

ぼっーとして空を眺めていた少女は急に息を飲み込んでしまった。
それに驚いた少女の母親は心配そうに少女にささやいた。

「どうしたの、リマ?調子でも悪い?」

リマは首を横に振り、指で空を指した。
客席を詰めていた全エルフの視線が分散し始めた。


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