狂気を運ぶ暴雨

第8話 1/2/3

姉とクレムの引きとめを振り払い、ナトゥーは母親を探しに旅に出た。
ラウケ神団という宗教団体については聞いた事もない。
しかし自分のために変な宗教にはまってしまった母親を考えると自分のために流した母親の涙を考えるとロハン大陸の隅々まで歩き回ってでも、母親に出会いたいと思った。
何処へ向かえばいいか分からないが、とにかく南へ向かうことにした。
朝日が昇る頃にはドラットの南部、エスカの川辺に着いた。

一晩中走り続けたライノにも水をやり、自分も休む為に川辺に座り込んだ。
ナトゥーは川に顔を浸し、冷たい水をゴクゴク飲んだ。
少しは心の中で渦巻いていた熱気も冷めるような気がした。
ライノは水を飲んだ後自分の体を洗っていた。
ナトゥーは自分もカイノンから離れてからお風呂に入ってないことに気が付いた。
母親が手紙一枚残し、何も言わずに家を出たということを聞いた瞬間に飛び出したので、持っているのは身にまとっている鎧と2本の剣だけだった。

「体も洗って、魚でも獲って食べようか」

ナトゥーは独り言をつぶやきながら、鎧を脱ぎライノの背中に縛っておいた。
顔だけが水面に出られるぐらいに深い所まで泳いで行き、ナトゥーは水にもぐり魚を獲った。
川辺にいるライノの隣に獲った魚を投げ続け、ある程度体もきれいになり食糧も確保できたと思ったナトゥーは川辺に戻った。
しかし、魚は全部消えていた。
代わりにセントールウォリアーが焚き火で魚を焼いていた。
ナトゥーは剣を引き抜いた。
剣が引き抜く音を聞いたセントールウォリアーは振り向いた。
彼はナトゥーに対して警戒は愚か、親しく手を振りながら声をかけた。

「お〜い、魚にぎっしり肉がのっているぜ。君も一匹食べてみろ」

森の中で出会うと攻撃してくるセントールウォリアーとはまったく反応が違ってナトゥーは少し慌ててしまった。

「とりあえず、何か着た方がいいな。裸の人と食事するのはちょっとあれだね」



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