第二章 神を失った世界

第4話 1/2/3

「ダークエルフの貴族様だからと油断しすぎたのかも」

右の胸あたりを押さえながらディタがつぶやいた。
彼の標的はダークエルフの貴族ロビナ・デル・リコンゾだった。
彼はロビナの攻撃に怪我をし、彼女を逃してしまった。
結果的にロビナを倒したのはライだった。
そしてライはロビナのせいで自分の標的、フロイオン・アルコンを逃してしまった。
セリノンがライに厳しくて冷たい視線を送った。
暗殺者で作られる組織、シャドーウォーカーを率いるセリノンは若い女性だったが、その年齢や性別が信じられないほどの実力者、組織のメンバーには恐怖の対象だった。

ライは思わずうつむいてしまった。
ライは標的に逃げられ、結局捕まえることができなかった。
結果的に標的を逃したのはライ一人だけだった。
セリノンは周りを見回して警戒し、手を目の前に挙げ、2回信号を送った。
セリノンの後に続いて4人の暗殺者は遺体だらけのダークエルフのキャンプから闇の中へ消えた。

ロハン大陸の北側にあるバラン島のダンは他の種族とは違って独立した種族ではなかった。
昔ヒューマンの王族クラウト・デル=ラゴスは兄を暗殺し、自ら王座に就き、ヒューマンの3代国王となった。
ちゃんとした政治を施したいとの思いからだったが、彼の極端な方法は国民の反感を買ってしまった。
結局クラウトは先王の王妃カロニアやその息子のセリオの軍隊によって王座から引き降ろされた。
クラウトは友人で支持者の預言者ヘルラックと共にカロニアの軍隊を避けて、ヒューマンの領土から離れた。
へルラックとその群れはバラン島に定着し、今のダンの先祖となった。
そして彼らはヒューマンと離れて独立した都市を建設した。

長い時間が経ち、大陸のドラゴンが消滅して各種族間の交流が始まった。
死んだと思われた、昔の謀反を図った者らがちゃんと都市を建設して今まで生き残っていることに、ヒューマンらは唖然とした。
そして長く考え、決断に踏み切った。
ダンをヒューマンと同じ種族として認めないとの決断だった。
他の種族より少数のダンはこの大陸のどこの誰にも頼ることができない。
そんな状況で彼らは自ら生き残る方法を探すしかなった。
ダンが一番恐れているのは、この大陸である大きな勢力が形成されることだった。
力が集中すればダンのような比較的少数種族は大きな勢力に食い込まれる可能性が高い。


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