第三章 因果の輪

第1話 1/2/3

フロックスは下位神の中では末っ子で、火を司る神。
ストレートで裏表がない性格のせいでロハとはかなりもめていた。
今日の朝にもフロックスは、ロハがアルピアの境に立ってゲイルに話したことを聞いて激しく怒っていた。
その時ロハがゲイルに言ったのはこの一言だった。

「あそこを壊せ」

ゲイルはロハの後に立っていたが、ロハが指差したロハン大陸を見た。
そして軽くうなずいた。
彼は下位神のうち3番目の神で大地を司る神。
口数が少なく、これまでロハのさせることにいかなる事も疑いもせずに従ってきた。
やがて庭園の片隅に立っていたフロックスが燃える炎のような真っ赤の瞳に怒りを盛り込んだまま、
叫ぶような声を出した。

「一体いつまでだ!?」

急に聞こえた叫びにロハはゆっくり振り向いた。

「何がだ?」

彼はフロックスの怒りなどは気にもしないような表情をしていた。

「地上の存在を本気で抹殺させるつもりか?!」

「奴らの生命力は主神オンから始まった。その命をお父様に捧げるのは当然のことだ」

フロックスが冷ややかな笑いを浮かべた。

「はっ、地上の彼らもそう考えてると思うのか?主神がそれを望んでると思ってるのか?」

ロハの表情には変化がない。

「惨めな命のために主神オンが消滅することは主神も望んでいないはずだ。」

「主神は自分の犠牲で大陸の命が永遠に続くことを望んでるとは思わないか!」

「それは主神が生き返ったら聞いてみろ」

ロハはこれ以上の口も利きたくないというようにフロックスから背を向けた。

「せめて正直になったらどうだ、ただ人生がつまらなくなったって」

フロックスが皮肉った言葉を吐いた途端、城の方に向かって歩いていたロハの足が止まった。
ロハについて歩いていたゲイルは低い嘆息をもらした。

「お前は何千年も生きてきた自分の人生がつまらなくなって全てを壊したくなっただけじゃないか!
主神のためだという口実で殺戮を味わいたいだけじゃ…くっ」

フロックスは急に体中から痛みを感じて、床に倒れそうになった。
ロハはフロックスの方を振り向いて彼を睨んだ。

「これ以上怒らせるな」

「俺は間違ってない」

「黙れ!」

フロックスが感じる痛みはさらにひどくなったようで、体から炎があがっている。
彼は苦しさに耐えきれず、うめきながらも皮肉を込めた言葉を吐くのをやめなかった。

「俺達に殺されたらどうだ?そうすればお前もお父様の後を追えるんだからな!消滅するんだよ!!」


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