第四章 隠された真実

第11話 1/2/3/4/5/6

「い、いえ・・・」

ちっとも思わなかった謝りの言葉に、ナトゥーは慌てて返事した。
ナトゥーの言葉を聴いたジャドールは微笑みながら話す。

「ありがとうございます。
では、もう一度お伺いいたします。
フロイオン・アルコン卿は今どちらにおられますか?」

「周辺の足跡と全体的な状況からみて、フロイオン・アルコン卿はハーフリングと共におられていると考えられます。
それに様々な状況から、今回の事件にはヒューマンも関わっていると思われます」

ヒューマンという言葉がでると、今まで無関心な態度でナトゥーの話を聞いていたカノス・リオナンの顔が固まる。

「ヒューマンがハーフリングと共にフロイオン・アルコン卿を拉致したと?」

「はい。
確実には言い切れませんが、フロイオン・アルコン卿の指輪を見つけた場所にはヒューマンの聖騎士の足跡も残っていました。
それにダークエルフの使者たちのなかで我々に襲撃のことを伝えた方の話によると暗殺者たちはヒューマンの言葉と似た言語を使っていたそうです。
私の考えでは、秘かに進んでいたダークエルフとジャイアントとの交流をハーフリングが気づき、ヒューマンを呼び寄せたのではないかと思っております」

カノス・リオナンの顔が歪み、目に怒りの炎が篭る。

「この生意気なハーフリングの分際でダークエルフを威かそうとするとは!
余がそれを見過ごすわけにはいかん!」

「陛下、どうかお気を鎮めてください」

ジャドールがカノス・リオナンの腕に手を乗せながら静かに言う。
すぐにでも剣を取り戦争を宣言するような威勢だったカノス・リオナンはジャドールの言葉を聴いて息を弾ませながら椅子に身を委ねる。

「下手に動けば、ヒューマンやハーフリングを相手に争うことになるかも知れません。
どうか慎重にお考え下さいませ」

ジャドールの言葉を聴いてナトゥーは頷いた。

「ジャドール殿の言葉通りです。
それに本当にハーフリングがダークエルフとジャイアントとの秘密会同に関して知っているのかも確実ではありません。
ゆえに私がその指輪を発見したあと、直ちにハーフリングの街を訪ねるのでなくこちらまで参りました。
もし私がハーフリングの街でフロイオン・アルコン卿を捜すとすれば、ハーフリングはダークエルフとジャイアントとの秘密会同があると確信するでしょうし、もし知らなかったとしてもジャイアントの私がダークエルフを探していることをみるときっと疑い始めるのでしょう」

「では、どうしろと?」

カノス・リオナンが神経質的に声をあげると、その隣に立っていたジャドールが彼を宥めるように言う。


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