第四章 隠された真実

第3話 1/2

「聖騎士を助けにきたのか」

「まさか!俺はヒューマンなんかに同情しないさ。
俺が気になるのはあっちのハーフリングだ。
今はハーフリングに雇われた傭兵の身だからな」

ライはそーっと自分の腰についている手裏剣に手を伸ばした。
しかしいつの間にか彼女の腕に矢が飛んできた。
ライは悲鳴を上げると同時に手裏剣を落とした。

「余計なことはしない方がいい。
お前らの剣が俺に届くよりずっと前に、俺の矢がお前らの心臓に刺さるからな。
これ以上邪魔したら許さん」

カエールの話しにセリノンはカタールを出して、脅かすような声で答えた。

「我らは仕事さえ片付ければ、すぐここを去る。
ハーフリングの犬はこのまま去れ」

セリノンの話しが終る前にまた風を横切る音が聞こえた。
矢はセリノンの後ろにいたディタの首に突き刺さった。

「もう分かったかい」

生き残ったのは自分を含めて3人だけで、しかもライは怪我をしてしまい、戦えないことに気付いたセリノンは歯を食いしばった。
フロンを少し睨んだあと、素早く仲間の遺体の方に手裏剣を投げた。
手裏剣は遺体にあたった瞬間炎を起こした。その炎から視線を離し、またアサシンらの方に視線を戻したときは、彼らは既に姿を消した後だった。

「ふん、瞬く間に逃げやがって」

カエールは矢を背中の矢の管に戻しながら冷ややかに言った。
エドウィンはアサシンが消えたことを確認してから、剣を戻し、カエールにお礼を言った。

「世話になりました」

「さっきも言ったけど、お前を助けようとしたわけじゃないからな。
あのハーフリングのためだ。
とにかくハーフリングに雇われた傭兵だから。
ところであいつら、相当殺しちゃったな。めんどくさいことになっちゃったな、ちくしょう」

殺された子供達の遺体を確認しながらカエールが言った。

「生き残った者はいない…ですね」

エドウィンは質問を投げた瞬間、その答えが分かった。
アサシンらは一撃で命を奪う方法を知っている。生き残った者がいるなら、それは奇跡みたいなことだ。

「いねーよ。
あいつらはひたすら殺戮のために剣を振るった」

うつぶせになっている遺体をひっくり返し、傷を確認しながらカエールが答えた。

「…エミル…??」

今すぐにでも息が切れそうな叫びがエドウィンやカエールの耳に聞こえた。
タスカーが凍ったように固まっていた。目はカエールがさっきひっくり返した遺体を見つめている。

「エミル、エミル!!
私の息子だわ!!
エミル、いやだあぁぁ!!!!」


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