第四章 隠された真実

第9話 1/2/3

「デルピンが生きている間には周りの人にこの詩の最初のところしか話さなかったそうです。
私たちの首都であったレゲンと今の首都であるヴェーナに関する話です」

疲れた顔のシルラ・マヨルが言葉を出した。
リマとトリアンの目の前に開かれた巻物にはデルピンの詩が書かれている。
巻物の文字が光りだしてから、同じ内容の詩が書かれた白い紙をトリアンの手に落として消えてしまった。
短い時間の間の魔法だったが、ものすごい魔力を消費させるものだと知ったトリアンは恐ろしさまで感じる。
ようやくヴィア・マレアの国王になるための条件の一つが強力な魔力の持ち主である理由が分かった。
エルフの中でもっとも強い魔力の持ち主の一人であるシルラ・マヨル・レゲノンがあれほど疲れを感じる魔法であれば、一般人はあえて試してみることすらできないはずだった。

「デルピンの予言はこれで全部ですか?」

リマ・ドルシルは戸惑ったようにシルラ・マヨルに問う。

「ええ、それがすべてです。
デルピンはレゲンに関する不吉な予言しか残しませんでしたゆえ、他の神官たちのように預言者の記録書に何も残せなかったのです。
この詩が残されたのも、デルピンの弟子のお陰です。
彼は師匠の予言を信じたため、デルピンが涙の洞窟に入ったあと、この詩を持ってエルス港まで逃げました。
私が女王になった後、その弟子の子孫が私を訪ね、この詩を渡してくれました。
ゆえに預言者の記録書に残されなかったデルピンの他の予言とは違って、唯一残されたものです」

リマはトリアンの手に落とされたデルピンの詩をもう一回読んでみたが、何も察知できなかった。

「陛下はこの詩が何を予言しているのか御存知ですか?」

「いいえ、今まであの詩を解読した人は一人もいません。
私もまたその詩を解読しようとしましたが、分かったのはロハン大陸の悲劇を阻止するため誰かが現れることだけです。
それが誰なのか、いつどこから現れるかもまだ分かりません」

シルラ・マヨルはトリアンに近づき、彼女の両手を握りながら話す。

「なんとなく貴方ならこの詩が解読できるような気がします。
何か必要なものがありましたら、いつでも私を訪ねてください」

「全力を尽くします、陛下」

「では私はこれにて失礼します。
今度また会えるそのときまで、お二人とも元気でありますようお祈りします」

女王はまた暖かい視線をトリアンに投げて部屋を後にした。
女王の姿が視野から消えてからリマ・ドルシルは重々しい口を割る。

「どうすればいいのか分かりませんね。
何かのヒントでも得られるのではないかと思いましたが、解けるべき謎が増えてしまって…」


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