第七章 破られた時間

第7話 1/2/3/4

ゾナトがハーフエルフたちを連れて、捨てられたデル・ラゴスの領土に住み着いたのはヒューマン暦284年の事だった。彼らは自分達の中心地を‘カイノン’と呼ぶようになったが、それは古代ロハン語で‘解放’という意味だった。

ハーフエルフたちがカイノンを建立したという噂は全大陸に広まり、あちこちに離れ離れになっていたハーフエルフたちが同族を探すためにカイノンへと集結し始めた。

デル・ラゴスはこういったハーフエルフたちの動きに警戒し、彼らを監視するためにカルバラン監視所を作った。デル・ラゴスは辺境の村を守るという名目で監視所を作ったと発表をし、カイノンのハーフエルフたちもそれに関してはあまり気にしていないようだった。

しかし、ヒューマンとハーフエルフの間には目に見えない微妙な溝が生じ始めていて、そういった溝は埋まることなくどんどん深くなり、やがて爆発寸前にまで至った。

結局、デル・ラゴスがカイノンに対して税金を払うよう通達したのを皮切りに、ハーフエルフたちの怒りが爆発した。ゾナト・ロータスは憤慨するハーフエルフたちと共にアインホルンに行き、王城の前の広場に家を立て始めた。

あわてたデル・ラゴスは急いで緊急会議を開いて税金の話をなかった事にするとハーフエルフたちをなだめた。ハーフエルフたちの自主性を認めるという言葉を聞いてから、やっとゾナト・ロータスはハーフエルフたちを連れてカイノンに戻った。

しかし、ゾナト・ロータスはヒューマン達をこれ以上信用できないと思った。もう二度とデル・ラゴスから自分たちが見くびられないように育てる必要があると思い、体系的な軍事訓練を始めた。

この時、ハーフエルフたちに目を光らせていたハーフリングの方から、ハーフエルフたちを傭兵として雇いたいと提案があった。

当時、あまり仕事のなかったハーフエルフたちにとって契約傭兵はよだれが出る提案だった。ほとんどのハーフエルフたちがこの提案に快く同意して、数ヵ月後には多くのハーフエルフたちがハーフリングの傭兵として雇われリマに向かった。

ハーフリングたちに軍事的な力がなかったわけではないが、生まれながら戦闘を好まなかったハーフリング達は、北方のジャイアントと南方のダークエルフから脅威にさらされていた。

特に南方のダークエルフたちは、イグニスとリマの中立地域で大々的な軍事訓練を行って、国境近くのハーフリングたちを不安にさせた。


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