第八章 夢へと繋がる鍵

第12話 1/2/3/4

「お久しぶりです、大神官。お元気でしたか?」

「はい、おかげさまで元気です。私を探していると聞きましたが」

「トリアン・ファベルさんの話が聞きたいです。
その他いくつか助言を求めたいことがありまして、連絡しました」

「トリアン・ファベルはヴェーナから出て、アインホルンに行く途中でクレア工房を訪問したそうです。
あそこで心を傷つけた少女の治療を手伝ったそうです。
今はアインホルンにいると、手紙が届いています」

シルラ・マヨルは静かに頷いてから、何も言わずにリマ・ドルシルを見ていた。
シルラは次の女王になれる人は、リマ・ドルシルしかないと思っている。
自分より優れた予言力の持ち主で、全てを包み込む優しい心、何よりこの厳しい今を乗り越えられる賢明さ…
リマ・ドルシルだったら女王になれると、シルラ・マヨルは確信していた。

「陛下?」

何も言わず、自分を見つめている女王に少し慌てたように、リマ・ドルシルが声をかけた。

「あ、失礼しました。私一人で物思いにふけってしまいました。どうか許してください、大神官」

シルラ・マヨルはヴェーナの広場を見下ろしながら、話し始めた。

「大神官も感じていると思いますが、この世はだんだん混乱しています。
一日に何回も神様へお祈りを捧げていますが、神様が私達に背を向けている事に気付くだけです。
どうすればいいのか分かりません。私たちはただ終末を待つしかないでしょうか…」

女王はこれ以上話が出来なくなったようだった。リマ・ドルシルの目にも涙が浮かんでいた。
トリアンが終末から抜け出す方法を探して旅に出ているが、間に合うかどうか分からない。
そもそも、抜け出す方法があるのかの確信もない。

「陛下…私が思っていることを申し上げてもよろしいですか…」


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