第八章 夢へと繋がる鍵

第4話 1/2/3

カエールの言葉にバナビーは静かにうなずいた。ゾナトを介護しているバナビーを後にして、二人はエルフのいる監獄に向かった。監獄といっても、彼らが監禁されているのは普通の古い空き家だった。
窓は全部閉じ、出入り口には鉄格子をはめて、罪を犯した人を隔離する空間として使われている。入口ではアリエと警備兵が興奮したハーフエルフ達を鎮めようと頑張っていた。怒りを覚えたハーフエルフ達は警備兵を押しながら叫んでいた。

「人殺し!そんなことをして自分だけは無事だと思ったのか!」

「お前らも彼女達の痛みを味わえ!」

「高潔の振りをしていたくせに、やることはモンスターじゃないか!」

人々を抑えようとしていたアリエはカエールが近づくのを見て助けを求めた。カエールはアリエの隣に行って大きな声で話し出した。

「皆さん、俺の話を聞いてください!」

人々は叫びを止めて、カエールの次の話を待った。皆の目には怒りが帯びていた。

「皆さんが怒るのも十分分かります。俺自身も怒りが収まらなくてどうしようもない状態です。俺も皆さんのように犯人たちに自分の手で罰を与えたいと思っています」

誰かが大きな声を出した。

「今すぐ殺しちまえ!」

皆同意しているようにざわめいた。カエールは首を横に振りながら、落ち着いた声で、しかし力を入れてしっかりと言い始めた。

「いいえ。犯人の処罰に我々の手を汚す必要もありません。あのエルフ達は同じエルフによって、処罰を受けるべきです。正式にヴィア・マレアにあいつらの犯罪について処罰を要求し、全てのエルフに認識させるべきです。これ以上、ハーフエルフはエルフの副産物ではなく、独立した存在だということを!種族間の抗争として今回の殺人事件について講義し、ヴィア・マレアだけではなくロハン大陸の全種族に、我々が何かに属しているわけではない、独立した存在と分からせることができると思います!」

カエールの話が終わる頃には誰も何も言わなくなった。みんなうなずきながらカエールの意見に同意しているようだった。監獄の前に集まっていた人々が一人、また一人と去り始めた。監獄をずっとにらんでいた最後の男の姿が見えなくなってから、やっとアリエは安堵のため息をついた。

「ご苦労様」

カエールはアリエの肩を抱きながらささやいた。アリエもカエールに寄りかかりながら疲れた声で答えた。

「カエールが来てくれて助かったわ」

「後は俺に任せて家で休んだほうがいいよ」


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