第八章 夢へと繋がる鍵

第9話 1/2/3

「一言で言うと狂ってしまったってこと?」

カエールから監獄に閉じこまれているエルフの話を聞いたアリエは、唖然とした顔をした。カエールはアリエの‘狂った’という表現に頷いた。

「そう。彼らは狂った。しっかりした状態で結婚式の新婦を殺せる人はいないはず。
結婚式で新婦を殺すなんて、許されることのない罪…」

「軍長はどうなるそう?」

「さあ…バナビさんにエルフの話を伝えるために行ってみたけど、まだ分からない。
魔法の攻撃に起因したけど、内に魔法が解除できる人はいないから。とりあえず、セルフが製造した非常薬を使ってみたけど、あまり効果がない」

アリエは髪の毛をくしけずりながら、深くため息を吐いた。

「世の中がどんどん悪くなっている気がする。種族同士の戦いは悪化するばかりで、いつ戦争が始まってもおかしくないね。毎日狩りをし続けてもモンスター数は減るところか、急増している。
ヒューマンのグラット要塞がモンスターに襲われて壊滅したという噂、聞いた?」

「うん。ヒューマンは相手したくもないが、グラット要塞がモンスターに落ちたという噂には驚いた。グラットは神の攻撃でも落ちないだろうと思っていたから」

カエールは母親のことを思い出した。カエールの母はエルフだったが、カエールが出来た後ヴェーナから離れ、森の中でカエールを一人で育ててくれた。
カエールは初めて父親について聞いたのは7歳の頃だった。
母親は、カエールの父親ゼラード・ダートンだと教えてくれた。父親は貴族で騎士だと教えてくれる母親の表情はあまりにも悲しそうだったので、二度と聞かなかった。
また父親についての話が出たのは、10年の歳月が流れた後、カエールが17歳になった頃だった。


・次の節に進む
・次の話に進む
・次の章に進む
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る