第九章 運命の渦巻

第8話 1/2/3

クレムのいきなりの行動に驚いたナトゥーにクレムは静かに話し始めた。

「いきなりお前が姿を消した後、俺はお前を探しまわった。
しかし、お前の行方を知っている者はいなかった。
先日イグニスから使臣が来た話をノイデ様から聞いた。
そのダークエルフの話によると、ある日ナトゥーという戦士が訪ねてきてドラットから派遣された使節だと名乗った。
国王の指輪を証拠として見せたので、何の疑いもなくダークエルフの国王の元へ連れて行くと、いきなり剣を引き抜き、斬りかかったという。
幸いに近くにいた近衛が捕らえたが、国王はショックを受け今は病に臥せている。
一度は地下監獄に収容したが、鉄格子を破り逃げ出したと、彼が抗議してきたそうだ。」

ナトゥーはダークエルフの緻密さに驚いた。

「それから、彼らは自分たちの被った被害に責任を取るように言っただろう?」

つぶやくようなナトゥーの話にクレムは驚いた様子だった。

「そろそろ、密約の件を決定するように言っただろう?」

「そうだけど…」

「お前、バタン卿に会ったことあるのか?」

クレムは首をかしげながら話した。

「バタン卿?最近何度か会ったな… 訓練場に訪ねてきたり、家まで来たりして…」

「何の用で?」

「さあ…俺の噂をよく聞いたとか…たまにはお前について聞いたりしたな。
もしかしてお前から連絡はなかったのかなど聞かれた」

ナトゥーはバタンがクレムを通じて自分の近況を把握していたことが分かった。

‘やはり政治家は信頼できない…’

「なぜだ?何かあったのか?彼と?」

「ノイデ様に会いたい。クレム、お前の力が必要だ」


・次の話に進む
・次の章に進む
・前の節に戻る
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る