第九章 運命の渦巻

第7話 1/2/3

空高くからプリアの町を見下ろしていたシルバはそうつぶやきながらラコンへ戻った。
神が離れた後には血のにおいが満ちていた。
恐怖にかられた住民達は、夫が妻を、母親が自分の子供達を、兄が弟を攻撃してしまった。
一緒に笑い、愛し合った家族や隣人達が、自分を攻撃してくる敵に見えたのである。
生き残るため、目に見える全てを殺そうと思ったのだ。
ほとんどの者が酷い怪我をしてしまい、流れた血ですべてが赤く染まってしまった。
まるでその血を洗い流すように雨が降り始めたころ、フロックスが町の入口に着いた。
地獄のような光景にに衝撃を受けたフロックスは町の中へ入った。
耳に入るのはつらいわめき声と、さらに激しくなる雨の音だけ。
旅館に着いたフロックスの目に、胸にナイフを刺され、地面に倒れているリオナが見えた。
フロックスは走り出してリオナを抱き上げた。

「リオナ!リオナ!!」

リオナを呼ぶフロックスの耳に、すぐにも消えそうな声が聞こえてきた。

「フ…フロック…ス?」

「うん、俺だよ。何があった?誰がこんな真似を…」

「わ…分からない… いきなり ひ…人々が…」

リオナはそれ以上続けられず、生き絶えてしまった。

「リオナ…リオナ!お願いだ…目を覚ましてくれ…リオナ!」

絶叫するフロックスの声が空まで響いていた。
火の神の絶叫にあわせるように雨足がもっと激しくなり嵐に変わった。
それは、地面に衝突する雨の音に混ざり、だんだん泣き声に変わっていった。

「なぜ…どうして…君が死ななければならないんだ…?どうして…」


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