第一章 救援の重さ

第12話 1/2/3

重い空気をそれぞれの肩で感じながら、3人の長い間、それぞれの思いに沈んでいた。
今度もその沈黙を先に破ったのはヒューマンの騎士エドウィンだった。
彼は溜息をついて言い始めた。

「どんな話しを聞いたとしても私はデル・ラゴスの聖騎士です。
私は私の剣に全てをかけて全ヒューマン守る神ロハへの忠誠を誓いました。」

エドウィンはまだ治っていない体を動いて立ち上がった。

「エルフのトリアン・ファベル、デカンのキッシュ。あなた達の助けには深く感謝いたします。
ですが、私はまだあなた達の話を信じることができません。
全ての父なるオンが消えたとか、神が私達を抹殺させようとしているとか、そういう話は聞かなかったことにします。」

エドウィンは腰の辺りを手探りで何かを探した。
トリアンは彼が何を探しているかに気付き、洞窟の隅に置いておいた彼の剣を取って彼に渡した。
剣を渡すトリアンとそれを取るエドウィンの視線が合った。
少しの疑いや嘘も映していないエルフの瞳。
その瞳の奥には洞窟の闇やたき火の明かり、そしてエドウィンの顔を映っていた。

「どこに行くんだ。まだ体も治ってないし、雨も止んでない。
それに要塞を襲った奴らがこの近くまで偵察に来てるかもしれない。」

キッシュの質問にエドウィンは腰に剣を付けなおしてから答えた。

「アインホルンに戻ります。私はグラット要塞の唯一の生存者です。
要塞の壊滅について一刻も早く報告する責任があります。」

「さすが騎士だな」

キッシュは冷ややかに言ったが、エドウィンはそれに気付かなかったふりをした。
彼はトリアンがいる方向に振り向いた。
心配げな紫の瞳。
その瞳と視線が合ったのは若い騎士エドウィンには大きな幸運でもあり、不幸でもあった。
エドウィンは1人の異種族に、デル・ラゴス聖騎士団の礼儀に沿った丁寧な挨拶をし、洞窟を出た。
日が明けるまではまだまだ遠いし、激しい雨が降り続いていた。


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