第四章 隠された真実

第12話 1/2/3/4

「ダークエルフ達はうちらハーフリングを無視するのよ。
彼らと会って話しをしてみると、まるで自分たちの下僕に命令でも下すよう・・・
言葉だけではないわ。
商人から仕入れるときにもそうなのよ。
リマには良い宝石が採れる山が多くて、うちらはその宝石を加工し、美しいアクセサリーを作って売っているわ。
もっとも近いのがイグニスだから、多くの客がダークエルフね。
お金持ちの貴族さんたちは自分が欲するスタイルの物を作ってくれと注文もする。
で、言われたとおり作ってもってゆくと、文句をつけて、値段をありえないくらいまで下げてしまうわ。
投売りでもできたらそれはまだ良いわ。
物だけ貰って金は払わない奴らも多いのよ。」

テーブルから皿が全部下ろされた後も続くようだった女将の言葉は、殺到する客の注文によって中断されてしまった。

自分の前のスプーンを持ち上げながらリオナが補足した。

「ビッキーおばさんのお父さんが、首都のランベックで結構大きい店を営んだ宝石職人だったって。
幼いころからああいうダークエルフのお客さんを結構見ていたらしいわ。
ビッキーさんの言うとおりダークエルフがハーフリングを見下しているのもあるんだけど、もっとも大きな問題は国境地域の国王親衛部隊なの。
武装した軍人が国境に立っているのも不安だし、知らないうちに国境線を変えながら少しずつ領土を奪っているのよ。
何度も長老たちがダークエルフの国王に抗議したんだけど聞くフリだけしてるって。
で、一部の街からはダークエルフを追い出したこともあるの。
それ以後、ダークエルフとハーフリングは、影ではお互い爪を研ぎあっているわ」

「おかげ様で、俺らが多く雇われているしな」

パンにバターを塗りながらカエールが言う。

「ヴィア・マレアやデル・ラゴスから離れようとしたハーフエルフたちがカイノンに集まって都市を建てたのはいいけど、経済的にはまだ不安定でね。
それでハーフリングに雇われて傭兵として働きながら稼ぐのが俺らの主な収入源なんだよ。
ハーフエルフの中には、ヒューマンの言葉とエルフの言葉、両方が使えるということで両国を往来しながら商売している奴もいる。
お前も聞いた事あるだろう?
バーガンディーのビール。
アインホルンでは結構有名じゃないか?」

「バーガンディーのビールはアインホルンだけでなく、デル・ラゴス全地域で有名です」

カエールの話を聞きながらエドウィンは各国が相当深い関係であることを知り、自分が井の中の蛙のようだと思った。
自分が知っているのは神ロハとデル・ラゴス、そして騎士道が全てだった。
今更ながら遠くまで旅立とうとしたことが良かったと思う。
いつの間にか夜空の月は空の真ん中に掛けられていた。


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