第四章 隠された真実

第7話 1/2/3/4

「ありがとうございました」

エドウィンは、気を失ったままベッドで横になっているタスカーを見てカエールに御礼を言った。
息子の遺体を目撃した直後、彼女はそのまま気を失った。エドウィンはカエールと一緒にタスカーを近くのプリア町に運んだ。
町の人々は聖騎士の服装をしたエドウィンやハーフエルフを見て少し戸惑っていたが、気絶しているハーフリングのタスカーを見てすぐ休む場所を提供してくれた。

「やるべきことをやっただけさ。
ところで、いつかはまた会えるかもって思ってはいたけどさ、こんなに早く会えるなんて、まさに偶然だな」

「僕を…知ってるんですか」

「この前トリアン牧場近くの宿で会ったんだ。聖騎士のくせに、神への不信でいっぱいだったからよーく覚えているのさ」

エドウィンはやっと、この男が誰なのかを思い出した。神はこの大陸を捨てたと言っていたハーフエルフ。

「もう名前ぐらい教えた方がいいかもな。
俺はカエール・ダートン。そっちは?」

「エドウィン・バルタソンです」

カエールは自分の顎を撫でながらうなずいた。そしてエドウィンの肩越しの方を指して聞いた。


「ところであいつは誰だ? このハーフリングの女は前一緒にいたところを見たけど、あのダークエルフは?」

「分かりません、この近くを通っていたところ、爆発しているような光を目撃して行ってみたら、この人がアサシンに囲まれていたんです。
まるで…自分の体中のエネルギーを全部燃やそうとしているように、魔法光を発していました」

「おや、聖騎士殿が危険な目に遭っている者と助けようとしたんだな」

カエールの冷ややかな言い方にエドウィンはムッとなった。

「危険な目に遭っている人を助けるのは当たり前です。
あなたも僕達が危険な状況だったから助けてくれたんじゃないですか?」

「さっきも言ったけど、俺は、俺がやるべきことをやっただけだ。
俺はハーフリングに雇われた傭兵だし、目の前にいたハーフリングに何かトラブルが生じたら、後で俺がその責任を問われるかもだから関わっただけさ。
俺がお前だったら知らん振りして通り過ぎただろう。俺とは関係ないことだし、勝てる確率もないからな。敵は5人だったし、剣を使えるのはお前だけだろう?
もし俺が助けなかったら、お前もあのダークエルフやハーフリングの女も全員殺されてたさ」

「あなたの話にも一理あります。
だけど知らん振りして通り過ぎたら?
その後あなたは気楽に過ごせると思いますか?」

エドウィンのダークブルーの瞳が、冬の空のような灰色をしたカエールの瞳をまっすぐ見つめた。
さっきまでは、冷ややかな笑いを浮かべた目でエドウィンを見つめていたカエールの顔に影がかかり始めた。
2人の間で流れる重たい沈黙を破ったのはカエールの低い声だった。


・次の節に進む
・次の話に進む
・次の章に進む
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る