第四章 隠された真実

第7話 1/2/3/4

「罪悪感を抱けるのも、生き残れたからこそだぞ」

「だけど、」

エドウィンがカエールに反論しようとした瞬間、部屋のドアが開き、そばかすの少女と長くて白いひげをお腹の辺りまで伸ばした老人が入ってきた。
老人は白い眉毛を動かしながらエドウィンやカエールに不満そうに言った。

「けが人を前にして、そんな話をしてる場合か?二人とも他人への思いやりなんかまったくないようだな。
これからはワシがこの二人を看病するから、君達は食事でもして休んでくれ。
リオナ、この二人をビッキーの宿に案内してあげな」

リオナという名前の少女はうなずいて部屋を出た。エドウィンとカエールに付いてくるようにと、手を振った。
エドウィンは少し戸惑い、タスカーやひげ爺の両方を見つめた。

「おいおい、俺は医者だぞ。エルフみたいに魔法は使えないけど、自然が恵んだ薬草などには詳しいから心配することはないんだ」

老人は嫌というようにエドウィンを部屋の外に追い出し、ドアを閉めた。
部屋の外でリオナやカエールがエドウィンを待っていた。追い出されたエドウィンを見てリオナはクスクスと笑う。

「心配しないで。
グスタフ爺ちゃんは患者には優しいから」

エドウィンは短くため息をつき、リオナの後を追った。
家の外に出たら、太陽は西の山の裏にその姿を半分隠していた。
この町に入ったときは警戒の視線を送っていたハーフリング達からは、もう好奇心に溢れた目で見られている。子供の中には手を振ってくる子もいた。
この町に来てハーフリングに会ってみたら、タスカーのあの優しくて明るい性格がどこから来たのか分かる気がする。

「ここがビッキーおばさんの宿なの。
最近冒険者がたくさん泊まってるけど、今日は幸い空いてる部屋があるっていうの。
カエールさんもここで食事でもしてから泊まってるとこに帰ったら?」

「うん、そうするさ。
この町も久しぶりに来たから、ゆっくり食事でもしようか。
明日からはまた忙しくなりそうだからな。
リオナも一緒に食べような、聞きたいこともあるし」

リオナは宿の玄関のドアを開けて奥へ入った。エドウィンやカエールも後を追って宿の中に入り、隅っこにある丸いテーブルの前に座った。
リオナは人々の間を通り過ぎて、大きな釜の中をヘラでかき回している女に話しかけた。
エドウィンとカエールを指差しながら何かを言っているようだったが、周りがうるさくてエドウィン達のところまでは聞こえてこない。

「あの子は…確かヒューマンらしいが、何でハーフリングの町に?
旅しているようでもないですが」


・次の節に進む
・次の話に進む
・次の章に進む
・前の節に戻る
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る