第五章 レクイエム

第7話 1/2/3

「私を誰だと思っているのですか?
カルバラ様の忠実な呪術師、アドハルマではありませんか。
ドビアンが飲んだ茶は、たしか心を凍らせる魔法の水で作られましたが、その中には目の前にいる人の言葉は信じさせる甘味料を入れておきました。
彼はカルバラ様に絶対服従するでしょう、くくくっ」

「なるほど」

大長老はアドハルマに近づいた。
彼の前で見下ろすと赤い布で覆われたアドハルマの下半身が目に入る。
悪魔の呪術に関わり過ぎたせいで、縺れてしまった両足。
そろそろ見慣れるころになったはずなのに、大長老は眉を潜めながら目をそらした。
大長老の不便な視線にアドハルマは気持ち悪がるところか、くすくすと笑う。

「それでも足がこうなったお陰で、カルバラ様がアルメネスを復活させるようになったのではありませんか、くくくっ…」

「しっ!声が大きい」

「くくくっ…
心配なさらず。
ここは私の夢の中と同様。
誰もが好き勝手に入れるところではないと申し上げたではありませんか」

「用心が深くて悪いことは無いだろう。
それより準備は問題なく進んでいるかね?」

「もちろんです。
聖なる儀式のための準備は全て整っております。
残りはドビアンが玉座に座り、エルフ共をドラゴンアイから追い出すのみです。
そこからが私が両足を代価にして得た呪術を披露する正念場になるでしょう」

大長老は満面に満足げな微笑を浮かびながら言い出した。

「アルメネスさえ復活すれば…
ロハン大陸を支配するのは神でなく、我々偉大なるドラゴンの末裔デカンになるはずだ…」


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