第六章 嵐の前夜

第12話 1/2/3

‘フロイオン・アルコンはハーフリングの村で無事に生きているのか?彼をドラットへ連れて行かなければ…。フロイオン・アルコンが無事に俺と一緒にいればダークエルフのやつらも変な突っ込みは出来ないだろう。

ベロベロの話通りなら、ダークエルフとの無駄な争いを防ぎ、ダークエルフの思い通りにならない為にはフロイオン・アルコンを無事にドラットまで連れて行く必要がある。しかし、俺の推測通りヒューマンとハーフリングが彼を連れて行ったとしたら、俺が彼を救い出すことで俺らがダークエルフと関わっていることがばれてしまう。どうすれば他の人々に疑われることなく彼を無事に救出できるだろうか’

冷たい風が耳を通り過ぎた。ナトゥーは歩き出しながらじっくり考え始めた。ふと肩に隠しておいた手紙が思い浮かんだ。

‘ベロベロはこのことをカイノンにいるハーフリングに伝えて欲しかった。ハーフエルフはハーフリングたちに傭兵として雇われているが、別にハーフリングの味方でもないし我々と敵対関係でもない。そうだ!カイノンにいるハーフリングに頼むのだ。

彼らにフロイオン・アルコンの安全を確認してもらい、連絡を頼めばいい。フロイオン・アルコンを脱出させてくれるのは無理かも知れないが、俺の手紙を伝えることは出来るだろう’

しばらく走ると目の前に国境線を守る警備所の明かりが目に入ってきた。ナトゥーはゆっくりと歩き出すと、近くの闇へ潜み警備所の様子を観察した。警備所とは言え、屋根のついた柱が入り口の両側に立てられているだけだった。

両柱には警備兵が一人ずつ立っていた。イグニスに入る時にはバタンからもらった巻物を見せて通ることが出来たが、今は許可書はおろか脱走している最中。静かに通り過ぎるのは無理だろう。まだモントからナトゥーが逃げた連絡がなかったのか、警備所は暇そうだった。


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