第六章 嵐の前夜

第13話 1/2/3/4/5

「その通りです。力を貸してくださいますか?」

フロイオンは何も言わず、ゆっくりとライに近づいた。彼女のベッドの横に立ち、ゆっくりと口を開いた。

「力を貸してあげるのは可能ですが、その前彼女から約束が必要です」

フロイオンの答えを聞いたロレンゾは怒りで顔をしかめてしまった。

「患者に治癒の代わりに取引を要求しているのですか?」

「すみませんが、私はこのようにするしかない事情にあることをご了解いただきたいです。彼女は私を殺せとの依頼を受けた暗殺者です。彼女の手により2回も殺されるところでした。

彼女が意識を取り戻した日に暗殺を依頼した人について聞きましたが答えは聞けませんでした。声を出せなかったこともありましたが、彼女が答えることを拒否しました。しかし私は確かめないといけないのです。どうかご理解いただきたい」

ロレンゾとガラシオンはライが暗殺者だったことを聞いてびっくりした。ロレンゾもしばらく迷っている様子で何も言えなかったが、やっと声を上げようとした瞬間、

「しかし…!」

いきなり誰かが彼の裾を引っ張っているのを感じた。振り向いたら、ライが裾を引っ張りながら首を横に振っていた。フロイオンはライに聞いた。

「私があなたにかけられている呪いの解除を手伝ったら、私の暗殺を依頼した人の名前を教えてくださいますか?」

ライはフロイオンを見ながら首を縦に振り、誓うように握った手を胸に当てた。フロイオンの提案を受けるとのしるしだった。フロイオンはロレンゾを見ながら言った。

「始めましょう」

ロレンゾはため息をついてから、ライを中心にフロイオンと反対側に立った。ベッドで横になっているライの両側に向き合って立ち、ロレンゾは自分のワンドを伸ばしながら説明をした。

「右手で私のワンドを握り、左手は私の右手を掴んでください。私が水を使った治癒を始めるとフロイオンさんは炎を作り出す呪文を唱えてください。呪いが解き始まると思います。フロイオンさんがおっしゃった通り、彼女にかけられた呪いが強力な古代の黒魔法であるなら相当の魔力が必要だと思います」


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