第六章 嵐の前夜

第4話 1/2/3

ガラシオンとロレンゾはグスタフに招かれて彼のキッチンへ向かった。暗かったキッチンは灯油ランプで火を付けると、灯火の黄色に染まった。

二人を食卓に座らせた後、グスタフはキッチンのキャビネットを漁りながら素早く食事の準備に取りかかった。
暗闇の中で沈黙していたキッチンはかたりとお皿がぶつかる音、湯気を出す薬缶の音、そして板を叩く包丁の音で忙しく息を始めた。

すぐに食卓の上には、燻製のシカの肉、みずみずしい野菜とキノコで作ったサラダ、チーズがたっぷり入った熱いスープ、そして芳しい蜂蜜茶が備えられた。グスタフは食卓の片隅に座りながら、二人に食事を勧めた。

「簡単な食事だが、腹ごしらえにはなるだろう」

「いいえ、すごいご馳走です。いただきます」

ガラシオンとロレンゾが食事を始めるのを見ながらグスタフは微笑ましい笑顔を浮かべた。しばらく彼らの食事する姿を見つめていたグスタフが口を開いた。

「今回の旅で収穫はあったか」

ロレンゾは少し考えこんだ後、首を横に振りながら言った。

「いいえ。北にあるほとんどの村を訪ねたけれど、エルフを捜す事すら至難でした。もしやと思い、他の種族にも聞いて見たけれど、知っている人はいなかったです」

「容易くはない仕事だろう。最早35年も前の事だからな…。 だが、きっと妹も君の事を捜しているはずだ。元気を出せよ。いつか会える日が来るさ。」

「はい、必ずそうであってほしいです。考えてみれば奇跡的に生き残っているのは妹ではなく、私の方です。私がオーク達に連れて行かれた時だって妹は母の懐に隠れて生き延びたのですから。近くにマレア神殿があったからきっと司祭達に助けてもらった事でしょう。むしろ、妹は私が生きているとは夢にも見ないでしょう」

「オーク達に拉致された人が伝説の精霊ライネルの助けで脱出し、育てられるとは。実際見ている俺も信じ難い事実だからな…。それで、これからどうするつもりだ?」

「ここで何日間泊まりながら薬の材料として使える薬草を採取し、次の旅のための準備を整えようと思っています。その後、カイノンを経由してエルス港に行くつもりです」

グスタフは少し眉間にしわを作り、心配げな声で言った。

「カイノンには寄らない方がいいと思う…」

「何かあったのですか?」


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