第六章 嵐の前夜

第6話 1/2/3/4

煉瓦の隙間から吹いてくる風の音、夜が深まったのを知らせるフクロウの鳴き声、お酒を呑みながらくだらない話で騒ぐ警備兵たちの声。モントの王宮にある地下監獄はさまざまな音で溢れていた。

しかし、どの音も集中しているナトゥーを邪魔する事はできなかった。指輪と引き換えに、警備兵から聞いた情報は衝撃的だった。宝石細工師と自分の事を紹介したベロベロというハーフリングが長老だったというのは軽く流せる話ではなかったのだ。

‘いったいダークエルフたちは何を考えているんだ。一種族の長老を簡単に殺すなんて。すでに戦争を覚悟しているとでも言うのか?しかし、ハーフリングと戦争を始めるというのはハーフリングの友邦である、エルフやヒューマンも相手にするという意味になる。

ダークエルフが急襲をするとしても三国を一人で相手するのは無理なはず…
まだ俺らと秘密協定を結んでもいない状態でこんな事を起こすというのはいつでも勝てる自信があるって事か?
しかし、戦争で勝利する自信があれば無理に俺らと秘密協定を結ぶための努力をする理由なんてないはずだ…’

ナトゥーはふと、ベロベロが地下監獄の中に閉じこめられているときに閉じ込められてから半年になる、と言っていた事を思い出した。

‘半年も自分らの長老が姿を消していたのに、ハーフリングたちはなんで動かなかったのか。まさかベロベロの言ったとおり、旅行中にモンスターに襲撃されて死んだとでも思っているのか?’

その時、ナトゥーの耳に入るものがあった。

「…ところで、あのジャイアントも今日死んだハーフリングみたいに始末するつもりかな。着ている服に豚の血を塗って同族に見せつけてさ。今回のヤツは金目になりそうな物も結構持ってそうだよな。

ハーフリングの爺が持っていた宝石やアクセサリーは全部取られちまったんだろう?しかし、あいつが持っている剣ぐらいは俺らがもらっちゃってもいいんじゃないか?」

ナトゥーはちらっと監獄を守っている警備兵たちを見た。


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