第七章 破られた時間

第12話 1/2/3

彼女が再び自分の声を出せるようになってから、私は彼女の魂のかすかな影を全て消すために努力しています。もしかすると、その影は永遠に消えないかもしれないけれど、私は最後まで最善を尽くしたいと思います。

私の行動を理解してくださると信じています。ここを離れる時、もう一度連絡いたします。どうか平穏な日々を過ごせますように。

クレア工房から、
トリアン・ファベルより。

しかし、手紙が大神官リマ・ドルシルに届く前に、トリアンはクレア工房を離れ、アインホルンに向かうことになった。ある日見た夢がトリアンの重い足を運ばせたのだ。

それは凄惨で絶望的な夢だった。空は黒雲で満ちていて、ヒューマンとエルフたちの悲鳴が所々であがっていた。城壁で囲まれた小さい都市は死の影から逃れようと必死になっていた。

城外に向かって絶え間なく弓を打ったが、敵は少しも減らなかった。敵が誰であるかは重要ではなった。重要なのは彼らが生きているみんなを殺すと言う事実だった。

南の城壁にヒビが入り始めた。魔法師達は残っている力を振り絞って防御魔法をかけた。しかし、敵は多すぎて強すぎた。魔法で作られた防御壁が粉々になりながら城壁が崩れ落ちた。ぼやけた土ほこりの中から血に飢えたオークたちの姿が現れた。

「だめ!」

恐怖と衝撃で叫びながら目を開けると、窓の向こうからかすかに光っている月が見えた。トリアンはあまりにも生々しい夢に呆然として体を起こすことすらできず、しばらく目だけを開いて横になっていた。


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