第七章 破られた時間

第14話 1/2/3

北に城壁が見え始めたのは翌朝だった。南の方からは既に攻撃が始まったのか、投石器から飛ばされた石が地面に落ちる重たい音がかすかに聞こえてきた。

エドウィンと兵士たちは北の城門に近づいた。予想通り、北側を守備する者は誰もいなかった。兵士たちは衝車を城壁に近づけた。5名が衝車を固定し、残りの5人とエドウィンは衝車に登って城壁を乗り越えた。

成功したと思った瞬間、遠くから飛んできた一本の矢が近くの壁に突き刺さった。
矢が飛んできた方向を確認すると、一人の兵士が敵の侵入を知らせながら、弓を構えていた。次の矢はエドウィンの隣にいた兵士の体を貫通した。

エドウィンは盾で身を隠しながら、剣を握り締めて敵に向かって走りだした。三番目の矢を放った敵兵がエドウィンの接近に驚いて迷っている隙を狙ってエドウィンは強く剣を振るった。敵兵は大量の血を噴出しながら倒れた。

しかし、エドウィンたちの侵入はもう知らされたようで、次々と敵兵が向かってくるのが目に入ってきた。

エドウィンは自軍に休まず矢を射るように命令しながら、自分も動いた。
長年にかけて剣術を磨いてきたが、同時に多数の敵兵を相手にする事は至難の技だ。自軍が放った矢に何人かの敵兵が倒されていたが、長引くと不利になる。

エドウィンは、投石器から飛んでくる石に向かって飛び出した。敵兵はエドウィンのいきなりの行動に慌ててしまい攻撃を止めたが、エドウィンを追いかけてきた。

何人かは投石器から飛んできた石につぶされ、何人かは石を避けようとしている中で互いにぶつかり怪我をしてしまった。エドウィンは城門の釣合い錘まで近づいた。城門は太い金属の鎖で繋げてあって、ハンドルに硬く固定されていた。

エドウィンの意図が分かった敵兵の攻撃が激しくなった。
エドウィンは剣を地面に捨て、片手で盾を持って防御しながらハンドルを回そうとしたが、片手ではできない重さだった。

選択できる道は一つしかない。エドウィンは盾まで捨てて両手でハンドルを回した。
背中に矢が刺さったが、諦めずに回し続けた。もう一本の矢がエドウィンの背中に刺された。2回くらい回したら、少しずつ城門が開き始めた。

城門が動き始まると、飛んでくる石が減ってきた。たぶん、中から城門が開かれるのを見て、石を飛ばすのを止めたのだろう。エドウィンは残りの力を全て出して思いっきりハンドルを回した。錘の重さで城門が勝手に開き始めた。

大きな歓声が近づくのを感じながら、エドウィンは気を失った。


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