第七章 破られた時間

第14話 1/2/3

全てはぼんやりとかすかにしか見えなかった。
周りは光に満ちていた。永遠で不滅な、聖なる光のようで、暖かくて厳粛に感じられた。

エドウィンは、夢の中で夢を見る自分を見ているような気がした。

何人かの後ろ姿が見えた。
性別も種族もそれぞれで、エルフもダークエルフも、デカン族までいた。みんな前の方の光に向かって立っていた。
疲れきっているようだったが、お互いに信頼しているのがエドウィンには感じられた。

ありがとう…

後ろ姿の誰かが声を出した。エドウィンからでは彼らの表情が見えなかったが、穏やかに笑っているのが分かった。

「…我々の創造神、ロハよ。貴方の手で息子を保護してください…」

耳の近くからかすかな祈りの声が聞こえてきながら、エドウィンは夢から覚めた。一番先に目に入ったのは、春の若葉を思い出させる緑色のカーテンだった。

「エドウィン!意識が戻ったのか?」

首を横にすると自分を見つめているジフリットの顔が見えた。ジフリットはベッドに近づき、エドウィンの手をつかんだ。

「…ここは…?攻城戦はどうなった?」

「君が城門を開いて我々の軍が中に進入できた。城門が開いた以上、それ以上の防御が無意味だと判断したのか、誰も抵抗しなかった。シュタウフェン伯爵は自ら敗北を認めて、今は臨時監獄に保護されている。父上と俺はお前を見つけて治療し、今はシュタウフェン伯爵の自宅の中だ。
グレイアム伯爵は国王陛下の命令に従い、シュタウフェン伯爵の息子を探している」

「俺と一緒に城壁を乗り越えた兵士たちは…?衝車を守っていた兵士は…どうなった?」

ジフリットはベッドから起き上がろうとするエドウィンを止めて、ベッドに寝かしながら答えた。

「君と一緒に城壁を乗り越えた兵士の中で生き残ったのは一人だけだ。衝車を守っていた兵士たちはみんな無事だった。それ以上は気にしなくていいから、今はゆっくり休んだ方がいい。君を見つけてすぐに治療を始めたが、出血が多いから気をつけた方がいい。父上がすごく心配していた」

エドウィンをベッドの上に横にさせて、もう一回布団を整えた後、ジフリットはバルタソン男爵にエドウィンが意識を戻したことを知らせに行くと、部屋から出た。

エドウィンはもう一回起きようとしたが、背中から激しい痛みを感じたので諦めた。右側にある窓の外から夕日に染まって赤くなった雲が見えた。まるで花びらのように赤くなった雲からは、血の匂いがするような気がした。

過去にも人に剣を向けたことは何回かあった。正式な聖騎士になる前に国境での戦いに参加した事がある。大体があまり強くないモンスターの狩りだった。海賊や山賊と戦った時もあったが、彼らに向かって剣を振るうことに迷いはなかった。

しかし、今は自分の剣で死んでいった命について心の片隅が重たく感じられる。生き残る為には他に選ぶ道はなかったとしても、少しの迷いもなく彼らに剣を向けた自分自身に少し恐ろしさを覚えた。

「エドウィン、体の調子はどうか?」


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