第七章 破られた時間

第2話 1/2/3/4

日が暮れてから始まった旅行は、休まずに一日を歩いたにも関わらず、終わる気配がなかった。日はいつの間に山間へと滑るように落ちていって、空には星たちが一つ二つ姿を現し始めた。

半分になった月もかすかな光を放ちながら東の空から昇っていた。エドウィンとジフリットの周りに立っていた侍従たちがランプに火をつけて、列をそろえて行進していた兵士たちは、両側のたいまつの光を頼って行進を続けた。東の空から昇っていた月が夜空の天辺にかけられる頃、列の前から長くて太い角のラッパの音が聞こえてきた。

「着いたみたいだね」

ジフリットが伸びをしながらつぶやいた。休まずに一日以上も歩くのは、聖騎士である自分にはそんなに難しい事ではなかったが、大神殿の中で規則的な生活だけを繰り返していた司祭である兄には、きっと辛い旅路だろうと思った。

戦闘がある場所には、いつも最低一人以上の司祭が同行しなければならない。司祭は戦闘が始まる前に、兵士たちに励ましの意味で祈りをささげてくれて、戦闘が終わってからは、死んだ兵士たちの葬式の代わりに追慕の祈りをささげてくれる。

他にも司祭は国王の代理者の役割も勤めていた。一般的に戦場に送られる司祭は大司祭の命令に応じて参加していたけれど、エドウィンがみるには、ジフリットは自分で志願して参加したように思えた。

「兄上、つらくはない?」

「この程度ならまぁ、大神殿で一日中祈りつづけているよりはましさ」

明らかに疲れているのに、ジフリットは快活な声で笑いながら言った。もう一度、長くて太い角のラッパの音が聞こえてくると、兵士たちは陣営を作るために忙しく動き始めた。ジフリットとエドウィンは隊列から抜け、馬を走らせてグレイアムベルゼン伯爵とバルタソン男爵の所へ向かった。

「父上、大丈夫ですか?」


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