第七章 破られた時間

第8話 1/2/3/4

振り下ろされた刃が造る断面のように切り立った崖の下には赤い川が流れていた。「流れる火」とも呼ばれる溶岩の川がゆっくりと熱気を発しながら静かに流れている。溶岩はほとんど人が足を運ばない深い山奥にある洞窟の一番奥から流れ出ていた。

洞窟の奥からは太陽のように赤く燃える溶岩が、巨大な城を丸ごと飲み込んでしまいそうな穴から絶えず湧き出していた。何でも溶かしてしまいそうな熱い溶岩の湖、その真ん中に一人の男が裸で浮いている。

時々、熱い溶岩が波のように彼の体を襲っているが、何も感じていないように目を閉じたまま、微動だにしなかった。彼の髪の毛は、まるで溶岩の色に染まったように赤かった。炎のように赤い髪の毛で、炎で作られた体を持っている。

彼こそ火の神でありダークエルフの創造主であるフロックスだった。フロックスは溶岩の火気で少しずつ体が癒されるのを感じながらいろいろなことを考えていた。

‘ロハから受けた傷のせいで神としての力が弱くなっていたのは感じていたが、ただの創造物にも負けるなんて…
死に掛けていたダークエルフにほとんど力を注ぎ入れたとはいえ、俺は神だ。神が創造物に負けることはありえない!’

フロックスは閉じた目を開き、洞窟の天井にぶら下がっている黄金の色の鍾乳石を見つめた。

‘ロハの言う通り、我々は本当に創造物に全ての力を奪われ、いずれは消滅してしまうのか…?’

主神オンがいきなり消えてから下位神たちはロハの意思に従い、ロハン大陸を一番初めの状態、太古の状態へ戻そうとした。ロハは全ての生き物を破壊することで消滅した主神オンを復活させることができ、下位神たちも永遠になれる唯一の方法だと言った。

ロハの言うことを全て信じたわけではなかった。ただ、他に何をすればいいのかが分からなかったのでロハの指示に従っていただけだった。しかし、たくさんの生き物を破壊してきたのにも関わらず、主神復活の兆しは何も感じられなかった。


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