第一章 救援の重さ

第2話 1/2/3

厚いカーテンは大きな窓の半分程しか隠していない。
長い窓の外からは、その堅固さで名高いグラット要塞の城壁、そして暗い夜空が見えている。
ほぼ満月に近い月が東の夜空に昇っている。
この世の母親、そして主神の伴侶であるエドネの瞳、月。
今夜はほぼ満月に近かったが、普段より冷たい青さで光っていた。

エドウィンは暖炉を眺めた。太い薪が月の光と対照的に真っ赤な色に燃え上がっていた。
松脂の香りが部屋中に漂っていたが、熱気はそれほど部屋を暖めていない。
松の薪に火をつけてそんなに時間が経っていないせいか、部屋はまだ少し肌寒い。

強くドアを開ける音がして、エドウィンは反射的に椅子から身を起こした。
彼は素早く腰を曲げ礼儀正しい姿勢でドアを開けた人を待った。
姿こそ見えなかったが、ドアの向こうに立っている者の高級そうな服装が垣間見えたからだ。

「顔を上げてくれたまえ、ここではそんなに硬くならなくてもいいのだから」

エドウィンは依然と礼儀正しい体勢を崩さないよう気をつけながら上体を起こした。
彼の目の前に立っている人は厚い布で作られた室内服を身にまとった、疲れた顔の老人だった。
痩せた体に窪んだ頬、上を向いている灰色の眉、頑固そうな印象だった。
きちんと鎧で武装した若い騎士が失望の表情を隠せないでいるのを見て、老人は微笑した。


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