第一章 救援の重さ

第2話 1/2/3

エドウィンはどうすればいいか分からなくなった。
自分の父親の年齢に近い、ましてや上司である人を呼び捨てで呼んでいいのか。
騎士団の規律やルールが頑なに守られていた大神殿と聖騎士団での生活に慣れているエドウィンに、
彼の話は相当のショックだった。

その時、2人の目が合った。
年を取った総司令官には若い騎士の目からまっすぐな心を窺い知る事が出来た。
若い騎士は、武装していないにも関わらず目に見えないパワーを発散している総司令官のカリスマを肌で感じだ。

「よく来てくれた、エドウィン・バルタソン君」

「宜しくお願いします、ヴィクトル」

エドウィンはグラット要塞の総司令官に、左の胸元に拳を当て騎士団の敬礼を行った。
そして2人の騎士は同時に微笑んでいた。

総司令官の執務室を出て、要塞の中庭に出た時、庭の向かいに神殿が見えてきた。
この神殿はヒューマンを創造した神ロハではなく、そのロハを創造した主神オンや母神エドネのために建てられた神殿だそうだ。

月は空の中央近くまで来ていた。
その青い光を浴び、質素で丈夫そうに見える要塞の壁が庭に影を落としている。

デル・ラゴスの首都アインホルンにある大神殿は知恵の神ロハのための神殿だった。
最前線のグラット要塞にロハのためではなく、オンやエドネの神殿が建てられていることはどこか不思議な感じがした。

エドウィンは溜息をついた。
とにかく、これから彼はここで聖騎士として、兵士として生きていかなければならない。
思わずロハへの祈りの一行をつぶやいた彼は少し戸惑った。そしてオンやエドネへの祈りをあげた。

夜空に浮かんだ瞳、エドネの瞳はただ黙ってこの大地を見下ろしているだけだった。


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