第一章 救援の重さ

第6話 1/2/3

エドウィンは直勘で「彼」が誰を意味するのか分かった。今エドウィンがやっとの事で目をそらしているあの存在。あの存在と目が合えば、たぶんエドウィン自身も跪いている騎士達同様、服従して跪いてしまうに違いない。全ヒューマンの神、ロハに。

エドウィンはまたホールの奥を覗いた。ホール中央に立ち絢爛と輝いているその存在は、彼が神の話や教理の本で見た絵の中の、神殿に描かれている壁画の中の、そして神の石像の、そのロハと同じ姿だった。眺めただけでも神聖な気が十分感じられる。

しかしその顔が浮かべている残酷な笑みや血だらけの手は、エドウィンにとって、騎士達のようにその前に跪くわけにはいかない原因になっていた。あの血まみれの手は…、あの手でハウトを殺したのか。
何故?何故ハウトを?ヴィクトルもハウトのようにやられたんだろうか。

「坊や、応えろ!急にしゃべれなくなったのか!」

尖った甲高いその声がまた聞こえた。そしてすぐその声の持ち主を責めるような女性の声。
エドウィンは小さな声で答えた。

「ここに…ロハ様が現れました、騎士団のホールに…」

「よく聞け、坊や。そいつは偽者だ。近づいちゃ駄目だぞ。この要塞はもう終わりだ。逃げるんだ、要塞の外へ全力で走れ!」

甲高くまるで金属がぶつかるように冷たい声で、そして冷静な言い方で伝えた。だが、混乱していたエドウィンの頭の中は、ただ1つのことだけを考えていた。

「あいつが…神の偽者がヴィクトルとハウトを殺したのか!」

エドウィンは落とした剣を拾い、しっかりと握り締めた。深く呼吸をし、それと同時にホールの中へ飛び込んだ。いや、飛び込もうとする瞬間彼の肩を握る手があった。骨と皮だけのように痩せ衰えた、鳥肌が立つほど冷たい手だった。


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