狂気を運ぶ暴雨

第2話 1/2/3

オンの神殿を囲む湖をさかのぼると、女性の顔のようにみえる大きな岩がある。
人々はその岩を「エドネの顔」と名づけ、巫女が毎日祈りを捧げている。
年に一度、巫女により、主神の言葉を伝える神事が執り行われていたが、流星雨が降りた夜、エドネの顔の祭壇を守っていた巫女が自らの命を絶ってしまった。
その後、エドネの顔を守る巫女が自ら命を絶つ事が相次ぎ、祭壇は見捨てられたまま放置されていた。

「見るたびに思うけど、まるで生きている女の人のようじゃないか?
聞いた?最近この顔がしゃべったって。確かにすぐにでも…何かをしゃべり出しそうだな」

近くの森で訓練をした後、湖の中で泳いでいた男性が言った。
一緒にいた女性は気に入らないといった様子で応じた。

「やめて。私がそういう話に弱いからって、冗談言ってるんでしょう?」

「お前も大変だな〜。そんなに臆病で卒業は出来るのかな?」

「うるさい!カタールの使い方は私のほうが上よ。そっちこそ卒業試験に失敗しないように頑張るのね!」

男性が意地悪な顔をしながら、水をかけた。
女性も負けずに相手をし、二人は楽しそうにふざけあっていたが、いきなり男性が動きを止め、彼の様子に異常を感じた女性も動きを止めた。

「何?」

「シーっ!」

「どうしたの?」

「聞こえない?」

「何が?」

「ちょっと静かにしてみて…」


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