狂気を運ぶ暴雨

第2話 1/2/3

女性も静かに周りの音に耳を澄ました。
水が流れる音や虫の鳴き声の間に、かすかな音が聞こえた。
岩がぶつかるような音だった。

「何の音?」

周りをみていた男は強い声を発しながら指さした。
男が指さした方向を見た女性は自分の目を疑った。
エドネの顔が…岩が動いていたのだ。
岩がぶつかる音は、エドネの唇のあたりが動く音だった。
女性は悲鳴をあげた。
その唇は声を発していた。

「聞け…聞け…ダンは私の声を聞かなければならない…
神に救われるなら…全て殺せ…殺せ…お前らは救われる…」

驚いた二人は急いでパルタルカへ走った。
そして自分たちが見たことを報告した。話は早くも軍長のベイエン・アスペラの耳に入った。

「最近類似した報告が増えているのが、気になります」

軍長の質問に、新しくナヤルの継承者になったセリノンが答えた。

「主神がわれわれに伝えたいことがあるのでは?」

皆が頷いた。ベイエン・アスペラはタバコをすいながら話した。

「岩の唇が動き、発した言葉はいつも同じことでした。
ダンは私の話に耳を澄ませるべき。神から救われたいなら、全て殺せ。
するとダンは救われる…何を意味していますか?」

「簡単ですね。殺されたくないなら、他の種族を殺せってことですね」

ブチ・クオンの解釈にベイエン・アスペラが眉をしかめた。

「なら、なぜいきなりそのようなことを言っているのでしょうか?」


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