狂気を運ぶ暴雨

第9話 1/2/3

ハエムは短剣の先で彼女の後ろ首に刻まれている文字を半分に切った。
少しにじみ出た赤い血が文字の真ん中に線を描いた。その時侍女の意識が戻ったようだった。
彼女は自分が長老と国王の後継者の前に横になっていたことに驚き、膝をつき無礼について容赦を求めた。
ハエムは彼女を見下ろしながら厳しい声で話した。

「質問に正直に答えれば、今回の件については秘密にしよう」

「答えられることは何でも答えます」

床に体をくっつけるようにうつぶせになっていた彼女は恐怖で震えていた。

「お前がこの部屋に入って何をしたか覚えているのか?」

「分かりません。私は何も覚えていません。どうかお許しを…」

「記憶にないってことか?」

「その通りです。いつの間にか意識を失い、目が覚めたらここでした。どうかお許しを…」

侍女はより下を向きながら叫ぶように容赦を求めた。

「なら、最後に覚えているのは何だ?」

「カルバラ大長老のお呼びで部屋に入りましたが…その後のことを覚えていません…」

ハエムとキッシュの目が当った。キッシュは少し震える声で彼女に聞いた。

「カルバラ大長老が貴女をお呼びになったということですか?」

「はい、その通りです」


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