第四章 隠された真実

第2話 1/2/3/4

「ロハン大陸の全ての生き物が神を恐れて欲しいのか。
それとも全部消してしまい、新しい世界を作り出したいのか。」

ため息をつきながらドビアンが言う。

「さあなぁ… 彼らが何を考えているのかは分からないね。
しかしどんな理由であろうと、ドビアンは… 
いや、偉大なるドラゴンの末裔デカン族は彼らを許してはいけない。
キッシュも感じているだろう?我々の血管で流れているアルメネスの悲しみと怒りを。」

「ああ、感じている。
どんな理由であれ、キッシュも神は許せない。そして、彼らを全部殺してしまいたいんだ。
しかし、どうすればいいのか?何をどうすれば、神の存在しない世界が創れる?
ドビアンは知らない。神を敵にすることがどういうことなのか。
キッシュは見てきたんだ。神に操られ、仲間同士で殺しあっているのをさ・・・ 
自分の意思などどこにもなかった。ただ神の傀儡になり、剣を振向いて仲間からの返り血を浴びても、何も感じない。
怒りや悲しみなど、そこには存在しなかった。」

「偉大なるドラゴンの末裔キッシュ。
我々はあの下位神たちが創り上げた種族とは違う。我々は主神によって生まれた生き物だ。
神たちと闘ったドラゴンたちと比べれば限りなく弱った存在ではあるが、彼らのように簡単に神に操られないだろうね。
我々がもう少しだけ力を養えば、神の無い世界で全てを支配できる。」

「キッシュは我々が彼らより優越であろうと、神に対敵するには彼らの力を借りるしかないと思う。
それに、実を言えば、本当に彼らより優越であろうかとも疑わしいのだ。ダンとの戦争で我々が完勝したのか?笑わせる…」

ドビアンの目から火がでて、彼の声が裂ける。

「ありえない!
一体、何が話したいのだ?
そういう考えで、これからデカンの…」

「偉大なるドラゴンの末裔ドビアン!
偉大なるドラゴンの末裔キッシュ!」

ドビアンとキッシュが振り向くと幼い少年が走って来た。

「老い虎のお使い君か。」

キッシュが独り言を呟く。
小姓の少年はドビアンとキッシュのところまで走って来て、息を切らしながら大長老が二人を探していることを伝えた。

「何のことだ?」

「存じません。
ただ、大長老が、国王陛下もお待ちでおりますゆえ、はよ連れて来られようと仰いました。」

国王も待っていると聞いてキッシュは驚いたが、ドビアンは見当をつけていたような顔で小姓に答えた。

「案内せよ。」


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