第六章 嵐の前夜

第3話 1/2/3/4/5

「トリアン!」

ジェニスは優しい声でトリアンを呼びながら彼女を抱きしめた。

「トリアン、もう何年ぶりなの?
魔法アカデミーに入学してからは一度も会えなかったわね。
まさか今日貴方に会えるとは…」

「ええ、20年ぶりですね。
ごめんなさい、元気でしたか?」

「もちろんよ。
毎日同じ日を過ごしていたけれど、今日は特別な日になりそうね。
まあ、こんな所で立っているのも何だから、中に入りましょう。
ちょうど食事のところだったの。
貴方が来ると知っていたら、何か美味しいものでも作っておいたのに」

「とんでもないです。
私が食事をお邪魔してしまったようでごめんなさい」

ジェニスは笑いながらトリアンの手を取って、家の中に入った。
テーブルの上には新鮮な果物や蜂蜜をいれたビスケット、牛乳などが置かれていた。
ジェニスは自分が座っていた席にトリアンを座らせ、新しい食器を取り出して彼女の隣に座った。

「はるばる来たお客さんがいるのに、つまらないものばかりでごめんなさいね。」

「いいえ、充分すぎますよ。ところで…
あれは誰の席ですか?」

トリアンが指したところには小さい皿と牛乳のカップが置かれていた。
まるで子供のために用意したもののようだった。

「ああ、あれはオルネラの席よ」

「オ…ルネラ?」

「まあ、貴方はまだ知らないでしょうね。
今私と一緒に住んでいる子よ。
さっき私に貴方が外で待っているって伝えてくれたけど…
どこにいるのかしら…?」

トリアンは窓から自分を見つめていた子供の顔が幻ではないことが分かった。
ジェニスは家の中の隅々まで調べながらオルネラの名前を呼んだが、少女はその姿を現さなかった。


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