第六章 嵐の前夜

第3話 1/2/3/4/5

「またどこかに隠れているようね。
さあ、食べましょう。
あの子はすぐ来るはずよ」

ジェニスがテーブルに戻って座りながら話した。

「かくれんぼが好きなようですね?」

「好きというか、もう生活化しているというか…
一人で暗いところにいたほうが気楽になるみたい。
詳しいことは後で話すよ。
それより、魔法アカデミーでの生活はどうだったの?
エルフなら誰でも行きたがるところじゃない」

「普通の学校ですよ。
授業受けて祈って…
テストも受けて…
授業中には朝飯前だった簡単な魔法もテストではとても難しくなるし…。
あるときは、まだ咲いてない花を咲かせる魔法のテストを受けましたけど、急に頭が真っ白になってしまって呪文が思いだせなくなってしまいましてね。
なんとなく思い出して使いましたが、花が咲くのではなく実がなってしまって…
結局それは再度テストを受けることになってしまいました」

「でも魔法アカデミーでは優等生として卒業したって?
先日アカデミーの総長と会う機会ができて、貴方のことを聞いてみたの。
貴方の褒め言葉しか聴けなかったわよ」

「まあ…
別にやることもなくて授業ばかり熱心だったからでしょう。
父が亡くなってからは休みの時にもアカデミーの寮と図書館にしか行きませんでしたし…
思い出せば、私のように退屈でつまらなく魔法アカデミーを通った人は他にいないと思います。」

トリアンは亡くなった父を思い出して黙り込んだ。
労しい目つきでトリアンを見ていたジェニスが静かな声で告いだ。

「トリアン…
もしかすると貴方の家族が一人、残っているかも知れないわ」

顔を上げたトリアンが目を丸くしてジェニスを見つめる。


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