第七章 破られた時間

第1話 1/2/3/4/5/6

大長老の言葉に銀角シカの長老であるバルコンが意見を提示した。

「現在、成人のハーフリング達に召喚技術を教えていますけれど、今からはもっと若いハーフリング達にも召喚獣を召喚できるよう教えなければならないと思います」

周りがざわめき始めた。大長老が静かにさせるために自分の腕を上げた。皆が静かになると大長老はバルコンに聞いた。

「もっと若いハーフリングとはいくつぐらいのことをおっしゃるのですか?」

「我々、銀角シカの伝統によると8歳からハーフリングは召喚技術を身に付ける事が出来ます」

松コケの長老であるバホベンが心配げな顔で言った。

「8歳は幼すぎるのでは…召喚技術は自然の中の野生動物と契約を結ぶ事なのに、8歳には厳しすぎないでしょうか?」

最初、召喚技術を使えたのは銀角シカ部族だけだった。しかし、銀角シカの長老出身で大長老になったウルラフは、20歳以上の全てのハーフリング達に召喚技術を身に付ける事を奨励した。

野生動物と召喚関係を結ぶというのは、召喚者が召喚獣に自分の生命力を分けてあげることを意味する。召喚者の生命力を得た召喚獣は、平凡な野生動物ではなくなり、精霊体になって召喚者を守る事ができた。

「そうではありません。昔、我々の部族は毎年春になると、新しく生まれた銀角シカとその年8歳になった幼いハーフリングの間に召喚契約を結びました。幼いハーフリング達は自分の召喚獣である銀角シカを育てながら一緒に成長していきました。

子供の野生動物と召喚関係を結ぶことは、召喚者に負担が少ないから8歳でも可能な事でした。今も銀角シカの一部の家族達は伝統通り、8歳になったハーフリングとその年の春に生まれた幼い銀角シカが召喚契約を結ぶようにしています。私も8歳の頃、今の召喚獣と召喚契約を結びましたし、私の息子も同じです。

来年には孫達にもそうさせるつもりでした。今は故人となったウルラフ大長老も、20歳以上としたのは、当時は召喚技術になれていなかったハーフリング達にまず慣れてもらうためだったのでしょう。そして、もっと若いハーフリング達に召喚獣を持たせようとする理由はもう一つあります」

皆の視線が銀角シカの長老に集中した。バルコンは深いため息をついて悲しい声で言った。

「自然が破壊されつつあります」


・次の話に進む
・次の章に進む
・前の節に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る