第七章 破られた時間

第10話 1/2/3/4

国王の命令で正義を貫こうとする者。すべてを捨てて一番大切なものを守ろうとする者。両者の戦いはかなりつらいものであった。シュタウフェン伯爵の兵士達は、グレイアムとバルタソン男爵の兵士が城への接近が出来なくなる程度の最低限の攻撃をやってくるだけだった。

朝から開始された攻撃は、太陽が西の空に沈んむまで何の進捗もなかった。グレイアムは、これ以上戦いが長引くと兵士の士気は落ち、より多くの犠牲者が出るだけだと判断した。早く城の中へ進攻したほうがいいというグレイアムの意見にバルタソン男爵も同意した。

「自分も同じ事を思っていました。この戦いは長引いても互いに良いことはないと思います。またシュタウフェン伯爵は攻撃よりは防御に集中しているのでより強く攻めた方が良いと思います。衝車を準備させましょう」

「私の意見はちょっと違います」

隣で話を聞いていたジフリットが口を開いた。グレイアムはジフリットに話を続けるよう促した。

「シュタウフェン伯爵が私たちを攻撃するつもりがない事については同意します。しかし、衝車を使うことで城の中へ侵入できるとは思いません。

相手がある程度被害を受けて、防御が弱くならないと衝車で城へ入ることはできないでしょう。今のように全ての力を防御に注いでいる状況では、逆にこちらの兵士の士気だけが落ちるだけだと思います。」

「考えている作戦でもありますか?」

「昨日城へ行った時、下男も下女もいなかったと聞きましたが…」

「はい、残っているのは年寄りの執事と馬子だけでした。執事の話ではシュタウフェン伯爵から命令があって
私たちが着く前にみんな城から離れたそうです」

ジフリットはテーブル上に広げておいた地図から城の南と北を示しながら話を続けた。

「では、城の中に残っているのは伯爵と武装した兵士たちだけですね。投石器を利用して南の方向を攻撃し、北からは衝車を利用して城に侵入した方がいいと思います」


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