第七章 破られた時間

第10話 1/2/3/4

エドウィンは決意に満ちた眼差しだった。ベルゼン伯爵はエドウィンの肩に手をかけながら言った。

「そなたに北の攻撃を命じます。夕方、日が沈むと同時に10名の兵士と移動してください」

「かしこまりました。今から準備をします」

エドウィンはバルタソン伯爵のキャンプから出て自分のキャンプへ戻った。すばやい兵士を10名選抜し、剣と盾、その他必需品を準備させ、日暮れの頃、出発準備を終えた。それに合わせてグレイアムは戦線の兵士に陣営に戻るように命令した。

シュタウフェン陣営も敵が下がると攻撃を止めた。やがて太陽の光が完全に消え、暗くなってからエドウィンは衝車を引く兵士と東へ向かった。相手に気づかれないように出来るだけ遠い道を選んだが、
出来るだけ早く着かないといけないないので急いで移動した。

シュタウフェン伯爵の城が見えないくらい遠くなって巨大な森が現れた。大きな木々に満ちた森の中には月の光すら入らなく、目の前すら見えない真っ暗な所だった。エドウィンはたいまつに火をともして先方に立ち、衝車を引かない兵士にもたいまつを持たせた。

どこかから吹いてくる風にたいまつの火が揺らいで地面に影を作った。目的地を正確に把握することが最優先だ。昼間は太陽の動きで方向を把握し、夜に月の動きで分かることが出来るが、月光が入らない真っ暗な森の中で正確な方向を知るのは大変なことだった。

休まずに前へ移動するしかない。エドウィンは頭の中で地図を描きながら、北だと思っている方向へ歩き続けた。漆黒の闇の中をくぐりぬけることは、まるで足踏みをしているような錯覚までした。

周りは完全な暗闇で、かすかに木の陰が見えるだけだった。兵士たちも必死に自分の足元を確かめながら歩いていた。エドウィンはこれ以上暗い雰囲気にならないよう、兵士たちに声をかけた。


・次の節に進む
・次の話に進む
・次の章に進む
・前の節に戻る
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る