第七章 破られた時間

第4話 1/2/3/4/5

一国の国王であったが、実際権力は妻のシャロット・コンテブローと父であるコンザロ・リオナンが持っていたため、ロシュ・リオナンが愛する人と息子にできる事は離宮で安全に過ごせるようにしてあげるだけだった。

王の情婦という事だけで、アンジェリーナは息子と一緒に遠く離れた離宮で外に出ることもできず過ごさなくてはいけなかった。先王はほとんどの時間を離宮でアンジェリーナとフロイオンと共に過ごした。フロイオンは父上の代わりに陛下と呼んでいたロシュ・リオナンとのたくさんの思い出を持っていた。

フロイオンに楽器の演奏し方や、絵を書く方など直接教えてくれた。フロイオンにとって、ロシュ・リオナンは限りなく優しいお父さんであった。

‘いつも春になると、陛下は母上に自ら摘んだ薔薇を抱かせてくれて、眠れない真夏の夜には私の隣で色々な美しい話をしてくださった。冬になると母上と私の肖像画を直接書いてくださった’

離宮で先王と共に過ごした時間は10年もなかったけれど、フロイオンの記憶の中に先王との思い出がたくさんある分、腹違いの兄であるカノス・リオナンは先王の愛を受けられなかったわけになる。実はフロイオンは先王が持病で倒れた後、カノス・リオナンの命で離宮から追い出されるまで、腹違いの兄がいるとの事を知らなかった。

先王が倒れて、もう離宮に来られなくなったとき、フロイオンはやっと10歳だった。先王を最後に見てから1ヶ月ぐらいが経った頃、気難しい顔の男が離宮を訪ねて、アンジェリーナとフロイオンに離宮を離れろという命令が降りたと言った。

アンジェリーナは先王がそんな命令をするわけがないと抗議すると、彼は先王が意識不明になって、王子であるカノス・リオナンが王の業務を代行していると教えてくれた。その男が去ると、アンジェリーナは涙を流しながら、フロイオンに自分は王の情婦であって、先王には後を継ぐ王子がいるという事実を教えてあげた。


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