第七章 破られた時間

第4話 1/2/3/4/5

10歳のフロイオンは母上の話が何を意味するか、まだ分からなかった。ただ、お父さんであった先王にもう二度と会えなくて、自分には腹違いの兄がいるという事だけは理解できた。離宮を出て、モントの外にある屋敷に住居を移した日、フロイオンは王城の廊下で初めて自分の腹違いの兄という少年に会う事ができた。

先王と同じ銀髪という点以外に、自分や先王に似た所は少しも見つからなかった。彼はフロイオンと1歳しか違わないのに、氷のように冷たい印象で限りなく傲慢な目つきをしていた。口元には残酷が微笑みを浮かべていて見ている人に恐ろしさを与えた。

「お前があの有名な私生児か?」

それがフロイオンに気が付いたカノスの最初の言葉だった。その短い言葉は多くの意味を含んでいた。自分は先王の正当な後継者として次の国王になる王子で、フロイオンはあくまでも先王の情婦が生んだ息子である事。

自分とフロイオンが同じ父を持っているとしても、根本から違い過ぎるというのをフロイオンに念を押していた。モントの外にある屋敷に母親と一緒に追い出されてから、フロイオンはこれ以上甘えてはいられないと気づいた。

自分と母親を守ってくれていた先王はもういなかったし、自分は王族と貴族の曖昧な境界線に立っていると同時に、第2位の王位継承権を持っている事も分かった。離宮では知らなかった多くの事実に困惑したカノス・リオナンの歓心を買うために自分と母親を殺そうとした暗殺者たちは数え切れないほど多かった。

屋敷から出て道端を歩くのは自分を殺してくれと言っているようなものだった。後に、暗殺者たちは家の中にまで入り込み自分と母親を殺そうとした。幸い、当時家に来ていたおじさんのおかげで命は救われたけれど、それからフロイオンは自分のスタッフを枕元に隠して寝る習慣を付けるようになった。

結局、アンジェリーナとフロイオンはアルコン家の屋敷に落ち着くことにした。初めて離宮を出たとき、アンジェリーナの兄は実家に帰ってくるように説得したが、自分のせいで家族が辛い目に会うことを望まなかったアンジェリーナの意地で、モントの外にある屋敷で過ごしていたのだ。


・次の節に進む
・次の話に進む
・次の章に進む
・前の節に戻る
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る