第七章 破られた時間

第6話 1/2/3/4/5/6

しばらく夜空の月を見ていたシュタウフェン伯爵は自分の部屋に戻り、鎧を装備した。最後に腰に剣と鞭を固定してから伯爵はヘルメットを片手に持ち、城の地下へと向かった。

地下の巨大な倉庫を通り過ぎ、長い廊下を歩いて行くと、大きな錠前で硬く閉じられた扉が窓から入ってくる月の光に照らされてその姿を現した。伯爵は首に掛けていた鍵で、錠前を開けた。厚い鉄の門が開かれると、深い地下まで響き渡る奇怪な喚き声が聞こえた。

しばらくの間、扉の前で苦しい表情を作っていた伯爵は、深呼吸をすると固く決心したように泣き声が聞こえてくる場所へと向かった。地下に繋がる螺旋階段を降りれば降りるほど、泣き声はどんどん大きくなるようだったが、急に静かになった。

階段を全部降りると、壁に掛けられているトーチで炎に照らされたさびた格子でできている監獄が目に入った。伯爵はさびた格子向こうの闇の中をしばらくの間、黙って見つめていた。闇の中から二つの緑色に輝く瞳が現れ伯爵をにらみつけた。伯爵は格子の前へと一歩近づいた。

「オーウェン…」

急に大きな泣き声が上がってから格子に巨大な物体が飛び掛ってきた。‘ガタン’という音が鳴りながら地面が揺れた。しかし伯爵は格子の向こうで泣き叫ぶ巨大な生命体を見つめるだけだった。

監獄に閉じ込められているそれは人ではなかった。鋭い歯を剥き出しにしながら、荒く泣き叫ぶのはワーウルフだった。そのワーウルフが人間であったということを、首に掛けられている大きい太陽模様のペンダントが付いているネックレスが物語っていた…


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