第九章 運命の渦巻

第2話 1/2/3/4

ゴック・シャルクはフロイオン・アルコンとアンジェリーナ・アルコンを守れなかったことが一番胸が痛むことだった。体が衰弱してベットの上で横になって生活していたロシュの代わりに王になったカノス・リオナンは権力を振舞うようになった。
ゴック・シャルクは西の国境線に配置され、エルフ達の侵入を警戒するように言われた。
エルフ種族に好感はないが、彼らが理由もなく国境線を越える種族ではないと分かっていた。
理不尽なことだと思いながらも、ロシュ・リオナンの印章が押されている命令書には従うしかなかった。
元から彼が嫌いだった、王妃のアイデアではないかと思いながらも従うしかなかった。

半年後、ロシュ・リオナンの逝去でモントに戻った彼は
アンジェリーナとフロイオンがお城から追い出されたことがやっと分かったのだ。
ロシュ・リオナンの本当の家族は2人だけだと思った彼は二人を探してみたが、フロイオンだけが誰とも会ってない噂があるだけで、アンジェリーナは痕跡すら残っていなかった。
また、アンジェリーナがモントの地下監獄の中で先王妃に殺されたという噂も広がっていた。
ロシュ・リオナンに引き継ぎイグニス国王になったカノス・リオナンは王位継承式が終わる途端、祖父であるゴンサロ・リオナンをお城から追い出し、二度と政治に手を出せないようにした。

また議会の力を弱くさせる為に自分の命令に従わない貴族たちを処罰した。
誰より彼の剣の先に置かれていたのは異腹兄弟の次の王位継承権を持っているフロイオンだった。
彼は多くの貴族から支えられていたのでカノスも敵対感を表には出さなかったが、裏でフロイオンを狙っていることは明らかだった。
フロイオン自信も不愉快な誤解がないように、貴族たちと距離を置いて静かに過ごしていた。
ロシュ・リオナンの葬式が終わってから、会いに行ったが、断れてしまった。
ゴット・シャルトが出来ることは、遠くから彼を援護しながら、彼を狙っている暗殺者を処理することだけだった。
フロイオンは自分の能力を抑えながらもイグニスのために貢献するため頑張っていた。
その努力でようやくジャイアントとの秘密協約の外交官になったと噂を聞いた。

「ひゅ…」

ゴット・シャルクは立ち上がり窓辺に近づいた。
火山灰に覆われた空は重く沈んでいるようだった。まるで彼の心境のように。
ゴック・シャルトは後が長くないことを感じていた。十分歳をとっているのだ。
だからこそ、先王のためにフロイオン・アルコンを国王にさせたかった。

それで、直接仮面を被り、自分の部下を攻撃までしながら、ジャイアントを地下監獄から脱出させた。
カノス・リオナンの命令で地下監獄に閉じこまれたジャイアントはドラットに帰り
自分が受けたことについてしゃべるだろうし、そうなるとジャイアントとの秘密協約は出来なくなるだろう。
プライドが高いことで有名なジャイアント族がダークエルフに宣戦布告をしてくる恐れもあった。
しかし、長い期間を説得したのに、なかなか秘密協約に合意しないところを見て、現ジャイアント国王は慎重な人だと判断したからこそ、彼を脱出させることまで出来た。
ジャイアントが秘密協約にまた一歩下がると感じたら、カノス・リオナンはあせりより集中するだろう。
その隙間を狙って、カノス・リオナンを暗殺そ、フロイオン・アルコンを王位に上げるのがシナリオだ。
彼の最後の任務であり、願いでもある。


・次の話に進む
・次の章に進む
・前の節に戻る
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る