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第四章 隠された真実 第11話 - 1 08.11.19
 
ダークエルフの首都であるモントは
火山から噴き出された溶岩灰の舞う空の下に位置している。
ナトゥーがモントに着いたのは夜明けごろだったが、
ダークエルフの国王と会えたのは月が昇る時間だった。
首都入口の警備兵たちが、ジャイアントであるナトゥーの通過を認めてくれたので、
ダークエルフの国王の許可を待つしかなかったためである。
ナトゥーはバタンから貰ったジャイアントの国王レフ・トラバの指輪を警備兵に提示したが、
彼らはその指輪には目もくれず、王宮の許可無しでは入れないと脅した。
待つことには慣れていたナトゥーではあったが、
半日以上を相反する他種族の地で待つのはあまり面白いことではなかった。

夕日が暗い空に赤いオーラが漂いはじめたころになって、
やっと王宮からの使者ダークエルフが出迎えに来た。
彼はいくらジャイアントの国王の指輪を見せようとしても
身分の低い警備兵たちはそれがどれだけ重要なものなのかも知らないといいながら、
ナトゥーの怒りを治めようとしたが、ナトゥーは何の反応も見せなかった。

首都の入口からモントの中央に位置している王宮に入るまで、
国王の専属侍従というそのダークエルフはナトゥーに色々と話を掛けてきたが
ナトゥーは固い表情で前を向いて歩くだけだった。
警備兵の話から始まった侍従のおしゃべりは
ダークエルフ初代国王ギデオン・カラトラバに続き、
王宮の門まで着いたころには現国王のカノス・リオナンと王妃の間には
王子が無く、王女が5人であり、そのうち長女のエミリタ王女が
次の王位を継ぐのではないかとの話まで進んだ。
 
「王子がいないのであれば、フロイオン・アルコン卿が王位を継ぐべきでは?」
 
ナトゥーの質問に侍従は意味深い微笑を浮かびながら静かに答えた。
 
「フロイオン・アルコン卿が生きておられればとの話しょうが…」

「フロイオン・アルコン卿はまだ生きておられます。
ハーフリングと一緒におられますが、きっと生きておられるはずです」

ナトゥーの確信に満ちた声に少し驚いた顔をした侍従は
あまり気にしていないというような顔で地面の赤いベルベットカーペットを指した。

「詳しいことは国王陛下に直接お伝え下さい。
このカーペットを辿ると謁見の間に着くはずです。
それでは、わたくしはこの辺で」

侍従は頭を少し下げてお辞儀した後、カーペットの反対側に去った。
その侍従の後姿を見つめていたナトゥーはカーペットを辿って歩き始めた。
すでに夕日は沈み、かすかな月光が廊下を照らす。
赤いカーペットは月の光を受け、ダークエルフの王国イグニスでは珍しくない
溶岩のように輝く。
暗い廊下で溶岩のようなカーペットだけを見て歩いていたので、
周りが明るくなったのも気づけなかったナトゥーは、
自分を呼ぶ声を聞いてから自分が廊下でなく、ある豪華な広間に立っていることが分かった。

「良くぞ参りましたぞ。ジャイアントの戦士よ」

あれだけ陰うつな城にこんな広間があるということが驚くべきであるくらい、
ナトゥーが入った広間は明るくて華麗だった。
天井には大きな赤い宝石を中心に色とりどりの宝石が空中に浮かんで廻しながら部屋を照らし、
家具は黒色の木材で作られたものの、繊細な金細工と宝石によって
高級で豪華な印象を与えてくれた。
赤いベルベットのカーペットの向こうには幅の広い階段があり、
濃灰色の鎧をまとう近衛二人がカーペットの両側に立っている。
その赤いカーペットは階段の上の豪華な椅子まで続いていた。

ナトゥーはその椅子に座り自分を見下ろしている人を見つめた。
左手で頬杖をついているダークエルフは高慢な顔でナトゥーを見ていた。
ナトゥーは一目で、その高慢な顔の持ち主が現ダークエルフの国王、
カノス・リオナンということが分かった。
ナトゥーが見てもカノス・リオナンとフロイオン・アルコンは全然似てなかった。
腹違いの兄弟であっても一つくらいは似たところがあるはずなのに、
カノス・リオンアとフロイオン・アルコンは似ても似つかなかった。
フロイオン・アルコンが濃蒼色だとしたらカノス・リオナンは燃え上がる赤色だった。

「お目に掛かれて光栄です、陛下。
わたくしはドラットから参りましたナトゥーと申します。
レフ・トラバの命により、陛下に謁見するためこの地に参りました」

「遅かれ早かれドラットから使者が来るとは思っていたが、
まさか鎧兜の武人が来るとはね…」

カノス・リオナンはナトゥーの挨拶を皮肉するように答えた。

`俺も自分がこの地に使者として送られるとは想像もしなかった`

ナトゥーは心中の愚痴が外に出ないよう口を固める。

「それはともかく…
ドラットで命をなくしたダークエルフの使者たちに対し、
レフ・トラバ殿はいかなるご決断を?」

「レフ・トラバ様はダークエルフの使者達に起こった予期せぬ惨事に深く遺憾な意を示し、
失踪されたフロイオン・アルコン卿を捜すため、最善の努力を尽くされますとの事を
お伝え致します」

「ジャイアント側ではフロイオン・アルコン卿が生きていると思っていますか?」

腹違いの弟の名前を口にしたカノス・リオナンの声には妙な感情が篭られていた。
まるで、生きていないことを祈っているような。

「わたくしはフロイオン・アルコン卿が生きていると確信しております」

ナトゥーの自信感溢れる答えにカノス・リオナンの右眉が少し引きあがる。

「何ゆえでそう思っておられる?」

ナトゥーは懐に入れておいたフロイオンの指輪を取り出した。

カノス・リオナンに指輪を渡そうと近づくと、石像のように微動もしなかった近衛たちが
スタッフをナトゥーに向けて構える。

「陛下にお見せしたい物がございます」

接近できないよう威かす近衛のため、ナトゥーはそれ以上近づけないまま
指輪を持ち上げる。
その時、急に後ろから女性の声が聞こえてきて、ナトゥーは驚いて指輪を落そうとした。

「わたくしにお渡しください」
第11話-2もお楽しみに!
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