第一章 救援の重さ

第5話 1/2/3

ナトゥーは自分がジャイアントという事に誇りを持っていた。
また、自分が優れた戦士の1人として認められている事に誇りを持っていた。
そんな彼にとって、ダークエルフという異種族はとても奇妙で、気まずさまで感じられた。

形容詞をたくさん使う言葉遣いや派手な服装はともかく、ダークエルフ男性の女っぽい仕草は見ていられない。彼らの手の動きはジャイアントの女性よりもなまめかしく見える。

そんなナトゥーだからダークエルフ使者団の護衛という仕事には不満が多かった。
そんな事より、危険な戦場で生き残るために剣を振るい、敵を倒し続ける方が彼の性に合う仕事だった。

しかし、首都エトンの戦士会から任せられた任務を拒否する権利は彼にない。
特に、もうダークエルフの使者団と合流後のこの状況では。

使者団は予想より小規模だった。
高飛車で偉そうに振舞うダークエルフの女性を中心に、護衛役の若い男性5人。
ナトゥーやクレムの部隊が配置されていた戦線の近くで彼らと合流し、二日ぐらい一緒に移動しているうちに、少しずつダークエルフの顔立ちになれてきた。

ダークエルフはジャイアントとは少し距離を置き、必要以上に親しくならないようにしているらしかったが、
その中の若い1人は、ジャイアントという種族を始めて見たらしく、興味を惹かれている様子だった。
彼は傍目にも分かるほどジャイアントを観察していて、目が合うと、にこりと笑った。
そんな柔らかい態度になれていないジャイアントの戦士達は、その若いダークエルフ青年の行動にどう反応すればいいのか分からず困っていた。

使者団を護衛し始めてから3日が経った日、泊まっていたキャンプから出発してから間もなく
ナトゥーはクレムに近づいてこう言った。

「ちょっと先に行って状況を見てくる」

[先発隊との連絡を君がやる必要はないだろう、下の者を送れよ]

「いや、俺が行く」

クレムは顔を顰めた。
ナトゥーはクレムが反論のために適当な言葉を探している間に、ライノに乗って先へと進んだ。

ナトゥーはダークエルフの態度を気まずく感じていて、彼らと話すことさえ避けたかったのだ。
それでダークエルフと一緒にいる時間を減らすために、先発隊の状況を見る、という口実で
使者団との距離を開けていた。


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