第一章 救援の重さ

第5話 1/2/3

フロンと呼ばれるその青年は、何かの反応を待っているように横目でナトゥーを見つめながら、顎を撫でたり毛の付いた帽子を被りなおしたりした。それでも無反応のナトゥーに彼はがっかりしたようで、それからは周辺の風景を眺めていた。
諦めの早い性格なのか、もしくはナトゥーも何回か経験したダークエルフ特有の見栄張りなのかもしれない。

「ここってすごく寒いですね。あなた達ジャイアントはそんな格好で、寒くないのかな?」

「…慣れているから」

フロンには薄い服装のナトゥーが不思議に思えたが、ナトゥーには毛皮を身にまとい暑く重苦しそうなダークエルフの格好が馬鹿らしく思えた。
ロハン大陸南方出身のダークエルフに、ジャイアントの領地である北の地域の寒さは耐えられない。
そういった違いだけでなく、両種族はあまりにも違う。
なのに、どうしてダークエルフは俺達ジャイアントと手を組む気になったのか…とナトゥーは思った。


「私たち使者団がドラットを訪問する理由は何なのかご存知ですか?」

フロンの急な質問に、ナトゥーは自分の考えていたことが読まれたような気がした。
不快さを感じて彼を睨んだが、フロンは依然と柔らかい微笑を浮かべていた。

「私達、ダークエルフはあなた達を北方の未開種族と呼んでいます。たぶん、あなた達ジャイアントも似たような汚い言葉で私達を呼んでいるのでしょうね。」

事実だった。
しかもダークエルフが呼ぶ北方の未開種族という表現より、ジャイアントがダークエルフを呼ぶ言葉はもっと汚い俗語である。子供や女性の前では口に出す事もできない表現だった。
その言葉が頭の中に浮かんできて、ナトゥーは少し困った気分になり頭を掻いた。

フロンは顔色ひとつ変えずに話を続けた。

「しかし、私達とあなた達ジャイアントには共通するところがあるんです、すごく大事な共通点が」

「共通するところ?」

「嫉妬からの憎悪、そしてドラゴン消滅以来この大陸を手に入れようとするヒューマンへの憎悪、そして…」

フロンは言う必要ないことまで喋ってしまった、というように舌を打ち、そのまま黙ってしまった。
ナトゥーはフロンをまっすぐな目で凝視しながら言った。

「ダークエルフとは、国家間の秘密協定のように重大な事も、護衛役の者にまでしゃべるようだな」

フロンの目が、まるでいたずらを企んでいる少年のように光った。
彼は馬の向きを変えて、どこか分からない方へ適当に手を振った。

「やっぱり仲間がいるところに戻りましょう、寒くてきついですしね」

フロンはナトゥーに止める間も与えず、自分の仲間の方へ馬を走らせた。
ナトゥーは身勝手なダークエルフ青年に不快さを感じるより先にあきれてしまい、肩をすくめた。


・次の話に進む
・次の章に進む
・前の節に戻る
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る