第四章 隠された真実

第16話 1/2/3/4/5/6/7

目に入るのは闇しかない。
いくら歩いても周りに見える景色はまったく変わらない。

「誰かいませんか?!」

フロイオンは大きく叫んだが、闇に覆われた風景からは何の答えも聞こえてこない。
ここはどこなのか。
何故自分がここにいるのか。
思い浮かぶ疑問は多いが答えは一つも思い浮かばない。
急ぎ立つ足を止めて、そのまま座り込む。
一筋の風さえ感じられない。目を閉じて膝を抱き体を丸くした。
何もやりたくない、何も考えたくないと思った。

「目を覚まして、王子様。
もう朝になりましたよ」

母の声が聞こえた。フロイオンは ガバッと跳ね起きた。

「必ず生き残りなさい。
貴方の朝を待っている人々のために…」

フロイオンは声が聞こえる方向に向かって大きく叫ぶ。

「母上!」

急に周りが明るくなったと思ったら、現れた光りに体が吸い込まれるような気がした。
目を覚ますと老いたハーフリングの顔が見えてきた。

「思ったより、早く回復したようだね」

彼は皺のある指でフロイオンの目蓋を開き、瞳をのぞき見る。
しばらくフロイオンの瞳をみていた彼は、フロイオンの目蓋から手を離した。

「気分はどうかね、坊や」


・次の節に進む
・次の章に進む
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る