第四章 隠された真実

第16話 1/2/3/4/5/6/7

「ある男の人が、あなたを暗殺者から守ろうとしてそうなってしまったわ」

慌てたフロイオンの顔をみたタスカーが説明した。

「ある男の人・・・?」

「誰なのは分からないわ。
目の前から消えてしまったの」

「私の命の恩人は貴方がた以外にもいたのですね」

タスカーは頷いて当時の状況を説明した。
彼女の説明がちょうど終わるころには宿の前に着いていた。

「もしその方にお会いできましたら、私が本当に感謝していると伝えてくださいませんか?」

「もちろんよ。
私もあの人に助けられたもの。
また会えると良いけどね…」

タスカーは昨日の夜に見た男の顔を思い出した。
ハーフリングというには結構背が高かった彼は、炎を思わせる赤い髪と赤い瞳の持ち主だった。
赤い瞳のハーフリングは見たことがなく、ヒューマンかも知れないと思いながらタスカーはエドウィンとフロイオンを追って宿に入る。
彼女たちが中へ入ると、ガヤガヤと騒がしい宿が急に静かになった。
フロイオンは自分のせいで空気が変わったと気づき、後ずさりしながら宿から出ようとした。

「ランチでキノコシチューを注文したい人は急いで!
今日はキノコがあまり無いわよ!」

宿の女将であるビッキーの大声に宿がいつものように騒がしくなる。
キノコシチューを注文しようとして、いつの間にか人々の頭の中からダークエルフのことは消えてしまったようだ。
フロイオンはビッキーに目配せして礼を言うと、ビッキーはフロイオンにウインクして台所に消えた。
タスカーが窓側の空いていたテーブルに座り、フロイオンとエドウィンを呼び寄せた。


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