第四章 隠された真実

第16話 1/2/3/4/5/6/7

「ここの女将のビッキーさんが作るキノコシチューはこの辺りでは有名なのよ。
そのキノコシチューを食べたくてランベックからくる人もいるんですって。
私も先日食べてみたけど、本当に最高だったわ」

タスカーは先ほどの出来事を忘れさせようと明るい声で話した。

「ありがとうございます」

フロイオンはタスカーに礼を言って、窓の外を眺めた。
窓の外には笑いながら遊んでいるハーフリングたちの子供たちがいた。
腹違いの兄であるカノス・リオナンは、ハーフリングの地を欲していた。
常に火山が爆発し、溶岩が流れる黒い地に比べてみれば、ハーフリングの草原はまさに天国のようだった。
それにイグニスと比べてみると、リマに埋蔵されている資源は誰だって欲しがるくらいに豊かだった。
リマの資源を手に入れるものが、ロハン大陸にてもっとも大きな軍事力の持ち主になれると言った兄の言葉も一理あると思った。
ヒューマンもその理由でハーフリングとの交流を活発にしているのではないか。
フロイオンはこっそりとエドウィンを見つめた。エドウィンはタスカーと何かをまじめに話していた。

「エミルの葬式が終わったら、アインホルンに戻ろうと思っています」

「エミル?」

フロイオンがエドウィンに聞く。

「エミルをご存知ですか?」

「ええ、この方のお子さんの名前がエミルですが…」

エドウィンはタスカーを示しながら答えた。
フロイオンの目頭が熱くなる。

「タスカーさん…
私は何と申し上げればいいでしょうか…
私はタスカーさんの息子さんにも助けていただきました。
暗殺者たちに追われ、傷を負って飢えながら森を彷徨っていたとき、タスカーさんの息子さんに助けられました。
なのに…
それが…」


・次の節に進む
・次の章に進む
・前の節に戻る
・前の話に戻る
・前の章に戻る
・目次へ戻る