第六章 嵐の前夜

第10話 1/2/3/4/5/6/7/8

であれば、親子を攻撃しているペルソナは3度目の変異過程にいる。オルネラのお母さんはペルソナに変身している人に早く元に戻ってほしいからそうしていた。一体、彼女があのようにまでなっても攻撃をしない相手とは誰なのだろう。

ペルソナの攻撃はさらに激しくなり、結局ペルソナの攻撃に彼女のワンドは半分に折れてしまった。それと同時にペルソナのキリのような爪は彼女の心臓を貫いた。彼女は悲鳴も上げられず、命を落としてしまった。トリアンは周りを見回したが、オルネラを救ってくれるような人は影すら見当たらなかった。

オルネラのお母さんが死ぬと、ペルソナは彼女の背中に隠れていたオルネラに向かって魔手を突き出した。急にペルソナの爪がオルネラの首に触れる直前に止まった。まるでそのまま時が止まったかのようだった。

しかし、時が止まったのではなかった。ペルソナの3度目の変異過程が終わったのであった。ペルソナの体が溶け出して、その中からエルフの男の姿が現れた。巨大な氷山の中に閉じこめられていた木が、氷が溶けて姿を現すように、彼はペルソナからエルフに戻ってきた。

エルフになった彼はまだ意識がぼんやりしているようで、少しよろけながら頭を強く振った。意識を戻すと彼は自分の目の前に広がった光景に悲鳴を上げ、倒れている女性の遺体を抱きしめた。

「アルネ!アルネ!!」

ようやくトリアンはペルソナになっていた男がオルネラのお父さんである事に気付いた。モンスターになったお父さんがお母さんを殺したと言う事に気付いた瞬間、トリアンは心臓が止まりそうな苦しさを感じた。

‘私がこんなに苦しいのに…オルネラは…’

トリアンはオルネラを見つめた。血まみれになってお母さんの遺体のそばに座り、妻の遺体を抱いて泣き叫んでいる自分のお父さんの方を向いていたけれど、オルネラの目には何も映っていなかった。男はオルネラを見つけると、片腕でオルネラを抱きしめた。

「ごめん、オルネラ。ごめんよ…。お父さんがお母さんを殺してしまった」

しばらくオルネラと妻の遺体を抱いたままむせび泣いていた男は、泣くのを止めて半分に折れた妻のワンドを手にした。彼は妻の遺体を丁寧に地面に降ろして、折れた妻のワンドを見ながら何かを決心したようだった。


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